柔らかい革命〜肌色(スキントーン)12色の色鉛筆

Tender Revolution by Twelve-Skin-Tone Colored Pencils

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人種差別・民族差別は「悪」だと教えられても、子どもの頃のぼくらの色鉛筆には一色の「肌色」しかなかった。肌の色は黒いこともあれば、茶色いこともあり、何色もの色鉛筆を使って初めて、人の肌の色を表現することができるのに、大人たちはそうは教えてくれなかった。肌の色は、人種によっても違い、その人の生きる環境によっても違う。厳密にいえば、肌の色は「人それぞれ」といってもいい。が、ぼくらの色鉛筆の肌色は一つしかなかった。

現在、クレヨンから「肌色」は消えている。鉛筆各社はかつての肌色を「うすだいだい」と呼ぶようになっている。あたりまえだ、肌の色はたくさんあるのだから、「肌色」なんて色があるわけがない。

ドイツの鉛筆メーカーであるリラ社(Lyra)から「肌色(スキントーン)12色セット」という色鉛筆が出ている。もちろん、人の肌の色は12色でも表現しきれないが、一企業によるこうした試みには敬服する。先生が教壇で「肌の色は一色ではない」と説明するより、12色の肌色鉛筆が存在するという事実のほうが、子どもたちにとって説得力がある。子どもたちは、この鉛筆を使い、人の肌の色を描く。それだけで人種差別がなくなるわけではないが、人の肌の色は人それぞれということを、子どもたちはこの鉛筆を通じて身をもって知ることができる。「柔らかい革命」という言葉が頭に浮かび、世界じゅうの子どもたちにこの色鉛筆で絵を描いてもらいたくなった。

幾百という言語より、色鉛筆のほうが役に立つこともある。こういう「柔らかい革命」こそ、今のボクたちに求められているのではないか。

批評.COM  篠原章
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