ザ・スプリングフィールズの “Dear John”と「パイのパイのパイ」

About “Dear John” by the Springfields

最近、〈バッファロー〉の付かないほうの(笑)ザ・スプリングフィールズをあらためて聴いて、後にソロ歌手として大成功するダスティ・スプリングフィール ドの歌唱は、兄妹でやっていたザ・スプリングフィールズ時代のほうがずっといいなあ、という感慨にふけったりしています。

ザ・スプリングフィールズ「ディア・ジョン」(1961)

ザ・スプリングフィールズ「ディア・ジョン」(1961)

そのザ・スプリングフィールズのデビュー・シングルは61年の“Dear John”(C/W Breakaway)。これが実に素晴らしい。イギリスのトラディショナル・フォークにカントリーの要素を入れ込んで、スキッフル調に仕上げた名作です。The Springfields – Dear John + Breakaway w/ B-sides (リンク先はYouTube)

でもこの曲、実は「ジョージア行進曲」(あるいは「ジョージア・ソング」原題:Marching Through Georgia)と同曲なのです。南北戦争末期の1865年に作られた行進曲。楽曲自体は、日本でも明治の比較的早い段階から知られ、添田唖蝉坊の長男である添田さつき(知道)によって「東京節」あるいは「パイノパイノパイ」として吹き込まれた日本語カヴァー・ヴァージョンが有名です(初出は1919年)。

手元にあるの“Dear John”はベスト盤の音源(CD)だけで、アナログのシングルもアルバムも持っていないのではっきりしたことはわからないのですが、多くのアーティストが“Marching Through Georgia”というオリジナルのタイトルの下にカヴァーしている中、ザ・スプリングフィールズがなぜ“Dear John”という別タイトルを命名。しかも、別歌詞(一部同じ)でカヴァーし、著作権上も別曲扱いして許されてる事情は不明です。
フィンランドには、異詞同曲で「Laiva Toivo, Oulu」という有名な曲があります。異詞同曲なんて珍しくもないのですが、もしお詳しい方がおられたら教えて頂きたいものです。

ちなみに、森山加代子のカヴァー作「パイのパイのパイ」(中村八大編曲)も、添田ヴァージョンより、ザ・スプリングフィールズの「Dear John」を意識してるんじゃないかとも思えますが、両シングルとも1961年の発売。森山版は5月ですが、スプリングフィールズ版の発売月は調べきれませんでした。当時の洋楽輸入事情からいって、スプリングフィールズ版が1月〜3月に英国で発売されていたとしても、中村八大がそれを聴くのは難しかった可能性が高い。つまり、森山版はスプリングフィールズ版とは無関係ということになるでしょう。

森山加代子「パイのパイのパイ」(1961年5月)

森山加代子「パイのパイのパイ」(1961年5月)

 

 

Special Thanks to american roots rock bar ROSEHILL

批評.COM  篠原章
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