迷走する翁長知事:「辺野古埋立承認取り消し会見」のウソ

9月14日10時より、翁長雄志知事が「辺野古埋立承認取消」の記者会見をするというから、動画配信を見た。

「承認取消の手続きを開始する」という発言はあったが、最終的に「承認を取り消す」とは断言せず、「承認取消を決断したのか」という記者の質問に対して、「あらゆる手段を駆使して辺野古新基地を阻止するつもりだが、政府の対応を横目で見ながら最終的に判断する」と語るのみ。

「なんだよこれ、ふざけんな」と思う。

もういい加減、ダラダラと取り消しを引き延ばすようなパフォーマンスはやめにしませんか? 辺野古移設反対、賛成の立場に関わりなく、県民や国民を欺くだけの政治姿勢。日本の政治風土に「曖昧」を尊重する伝統があることは百も承知しているが、翁長氏の姿勢は、まるで舵を欠いた漂流船の船長。決断、結論をいたずらに引き延ばすだけで、真剣にこの問題に取り組んでいる反対派も賛成派も、翁長知事にすっかりバカにされている。リーダーとして最悪の政治姿勢である。

翁長知事は一言「取り消し」といえばいい。手続き的にそういえないなら、「手続きは手続きとして、私としては取り消しを決断している」と明言すればいい。が、知事はそうはいわなかった。

それとも、行政訴訟になっても勝ち目はないから、実はまだ法廷外の政治決着に期待しているのか? そうだとすれば法廷外の政治決着とは一体何なのか?

「取り消し」は翁長知事にとって最後の切り札、生命線だから、いつまでもダラダラを続けたいのだろうが、このままでは県民・国民の信頼を完全に失ってしまうだろう。県民も国民も、翁長氏の「政略」を見抜き始めている。

【補 足】
会見から数時間経ったが、不思議なのは、沖縄紙を含む主要新聞各紙が、翁長知事会見の「言質」に触れないことだ。「取り消し承認手続きへ」といった見出しは誤りではないが、知事は「政府を横目で見ながら」と含みを持たせている。要するにダラダラやりたい、自らの責任を問われないかたちでやりたいという含みだ。
翁長知事は、埋立承認取消に関して法廷で争えば国に破れる可能性が高いことを知っている。知事が拠り所とする第三者委員会報告は穴だらけだから、公判での勝ち目は薄い。裁判で負ければ「それでも国のやり方は不当だ」とも「第三者委員会報告が不十分だった」ともいえる。つねに抜け道を残している。
知事は、自らの責任を問われないかたちで裁判に負ける方法を模索する一方で、振興策を引き出す構造は温存しようとしている。政府も「今以上の実力行使をしない」ことを担保しながら、翁長氏に譲歩するかもしれない。その間に辺野古移設は着実に進む。なんのための移設反対かまったくわからない。翁長知事の「ダラダラ」は移設を黙認しつつ、振興策を引き出すための政略だが、ジャーナリズムがこの点に注目しないのはなんとも解せない。

 

記者会見する翁長知事(2015年9月14日)。沖縄タイムスより。

記者会見する翁長知事(2015年9月14日)。沖縄タイムスより。

 

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批評.COM  篠原章
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