NO HATE TV出演始末記

昨日のNO HATE TVに出演しましたので、「始末記」(笑)としてご報告します。
 
2月24日に日本プレスセンターにおいて、沖縄の我那覇真子さん、依田啓示さん、手登根(てどこん)安則さんの3人が、「ニュース女子」問題に関連して、のりこえねっと共同代表・辛淑玉(しん・すご)氏に公開質問、公開討論の申し入れしたが、これを無視されていること等を記者会見で発表しました。たまたま私が同会見で司会を務めたことがきっかけで、野間易通氏、安田浩一氏の出演するNO HATE TV(のりこえねっとの資金援助を受けて、のりこえねっとTVの枠内で放映する番組)に招かれて討論しました。
 
野間氏は、しばき隊(現C.R.A.C)の創始者・主要メンバーとして活動し(職業は編集者・ライター)、安田氏は野間氏に同調しつつ、ジャーナリストととして活動しています。少々昔風にいえば「人権活動家」ということになりますが、とくに野間氏の「過激」な言動がしばしば注目を集めています。そのため、彼らには多数の熱烈な支持者と猛烈な敵対者が存在します。両氏とも20年来の知人で、個人的には今もわだかまりなくお付き合いできると思っていますし、その点は彼らも同じでしょう。
 
こちらは、沖縄の基地問題や沖縄社会の問題点、沖縄における言論空間の閉塞をテーマにすべく討論に向かったのですが、彼らは「我那覇さんたちの発信する情報は事実にもとづかないものであり、辛淑玉氏を始めとする在日朝鮮人・韓国人に対するヘイトスピーチである」ことを再三問題にしました。その際、篠原の執筆した論考が,我那覇さんたちの発信の資料になっていることも追及されました。
 
いってみれば被告人席に座って二人の検事に追及されている「図」だったのですが、そうした追及もある程度覚悟していったとはいえ、彼らの準備は周到であり、予想以上に問題の範囲も広かったため、十分対応できなかったことは反省しています。ただ、こちらからも「お前の方が事実を歪めている」と指摘することはできたのですが、「目には目を歯には歯を」という議論の手法には意義を感じませんので、あえてその手法はとりませんでした。
 
いちばんの反省点は、彼らの問題にする「人権」や彼らの展開する「人権擁護活動」について十分な知識を持ち合わせなかったところです。『人種に関する「ヘイトスピーチ」を発した者を徹頭徹尾追及する。そのためは罵詈雑言も辞さない』のが彼らの手法です。NO HATE TVという彼らの舞台に乗りこんだのですから、そうした観点からの番組になるのはわかっていなければならないのですが、彼らの活動と手法に対する理解は不足していました。
 
たとえば、「貴女(=辛淑玉氏)は沖縄県を日本の植民地と言い、(自らの不法行為が全国に拡散するのを恐れ)ありもしない沖縄ヘイトに論理をすり替えた。日本国民である我々沖縄県民が、在日朝鮮人である貴女に愚弄される謂われがどこにあろうか」という記者会見の席で配られた我那覇氏の文章が問題にされました。
 
たしかに彼らの論理からいえば、「日本国民である我々沖縄県民」と「在日朝鮮人である貴女」を対置する表現は「差別」と捉えたいところでしょう(正しくは辛氏は在日韓国人)。しかし、我那覇氏の意図するところは、沖縄県を植民地にたとえた辛氏の発言が、「沖縄県民に対する侮辱(差別発言)だ」という点にあります。辛氏を「在日朝鮮人」と呼んだのを「差別」だといいたいのでしょうが、特別永住者として日本への在留を認められている外国人である「在日朝鮮人」は法的な呼称であり、法的には日本人である沖縄県民が、法的にはあくまで外国人である在日朝鮮人に「植民地」といわれたことに憤るのを「不当」「差別」と言い切れるのか大きな疑問です。沖縄を「植民地」と表現した途端アイデンティティを否定される沖縄県民がいることに配慮しない「差別との闘い」が認められるのでしょうか。こうした我那覇氏の言葉尻を捉えて、野間氏は我那覇氏を「国賊」「汚物」だとまで言い切りましたが、彼らの考える「人権」「差別」が「絶対」で、我那覇氏の考える「人権」「差別」は考慮に値しないというような議論の進め方は、往年の全共闘などが得意とした手法です。
 
しかしながら、以上のような反論を彼らに向けてぶつける余裕を欠いてしまったことはやはり反省すべきだと思います。
 
野間、安田の両氏は、「ニュース女子」や我那覇氏らの声明文で触れられている「事実」には根拠がない、したがってデマだという批判も繰り返しました。こちらが沖縄の言論空間の歪みを問題にすると、「デマ」の発信を止めてからそうした歪みを問題にすべきだという論理で応戦しました。彼らが「デマ」と呼ぶ事実に、確認の困難なものが含まれていることは事実です。しかしながら、在日朝鮮人が組織的に沖縄での反基地活動に関わっていることは紛れもないこと、その点は彼らも否定しませんでした。人数まで確定できないのは、「私は在日です」といいながら戦列に加わる人はいないからです。ちなみに私の論考では在日関係者の「常時活動する者の3割から5割いる」という証言には触れていますが、人数は断定していません。
 
大阪の在日団体のメンバーが沖縄に常駐するのに違和感を持つ人もいるでしょうが、特別永住者が反戦活動、反基地活動に加わること自体、違法なことではありません。ただ、そうした活動家のなかに、外国政府の意向を受けて活動に加わる者がいる可能性があると私は指摘しました。これが「デマ」とされ、「差別」として糾弾されましたが、たとえば、金日成・金正日思想研究会のメンバーが、駐留軍労組幹部として在沖縄米軍基地に出入りしています。そうした点も考慮すれば、外国政府が反基地運動に介入する可能性への懸念は正当な懸念であると思いますが、彼らにそうした主張は伝わりませんでした。
 
最後にあらためて重要な点に触れれば、今回の討論では、沖縄の基地問題、沖縄社会の現状、沖縄の言論空間の歪みに対する議論はほぼ皆無でした。そちらの方向に話を持って行こうとしましたが、「差別」が最優先されました。沖縄にとって喫緊の課題であるこうした問題の解決なくして、人権も差別も語れないと思うのが私の立場ですが、目論見通りにはいきませんでした。。
 
今後「差別とは何か」の議論も必要かもしれませんが、差別を論じれば論じるほど、「論理と非論理の交錯する迷宮」に迷いこんでしまう可能性が高いと思っています。デマ云々の話もこれから継続するでしょう。が、この世界は「100%証明可能な事実」だけで構成されているわけではありません。「真実の追究」が議論を前に進めるとは限りません。ついでにいえば、彼らと連携する辛淑玉氏の過去の発言を見ると、不確かな「事実」だらけですが、彼らはそれは問題にせず、私たちの提起した「事実」だけ糾弾しつづけているのが実情だと思います。
 
これからもこうした機会があると思いますし、終了後、安田氏とは「基地問題」「言論空間の歪み」についてクールに議論する場の設定について話し合っています。今後の展開に少しだけ期待したいと思います。
批評.COM  篠原章
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