「沖縄振興計画継続」の見直しを — 沖縄に対する補助金は麻薬だ!

5月14日付け沖縄タイムスは、菅義偉官房長官の独占インタビュー(有料記事)を掲載しました。このインタビューのなかで菅官房長官は、2022年度以降も「沖縄振興計画」を継続したい旨発言しています。

これは今後15年の沖縄の命運を左右しかねない重大発言で、号外を出してもおかしくない「特ダネ大ニュース」ですが、一面トップ記事だったとはいえ、意外にも見出しなどは抑え気味の地味な扱いでした(電子版では有料記事扱い)。

とはいえ、このニュースを聞いて私は驚愕しました。これ以上の振興策(沖縄振興計画・沖縄振興予算)は、沖縄を弱体化し、全国の納税者に過剰な負担を与え続けると考えているからです。基地反対運動も継続することになるでしょう。

他府県と同様の補助システムに移行した方が、より実のある経済政策・産業政策を実施できますし、納税者の負担も軽減します。基地反対運動も弱体化します。安倍内閣もこの点は理解していると考えていましたが、辺野古移設などをめぐる「沖縄の抵抗」が予想を上回るものだったのか、沖縄県に大きく譲歩しているように見えます。

今年に入ってからの動向を見ると、こうした動きは十分予想されたことでした。

3月30日 鶴補庸介沖縄担当相(二階派)の沖縄後援会設立。会長は翁長知事の盟友・高良健氏(医療法人陽心会理事長)。
4月末  教育委員会人事への口利き問題で副知事を辞任した安慶田光男氏が、二階俊博自民党幹事長などの肝煎りで、政府と「オール沖縄」とのパイプ役となるシンクタンクを設立することが判明。
5月10日 翁長雄志知事が、佐喜眞淳宜野湾市長、大城肇琉球大学学長、自民党沖縄県連の島袋大政調会長などを伴って、永田町・霞ヶ関で陳情活動。政府の経済財政運営の「骨太方針」に沖縄振興策を加え、西普天間再開発計画に補助金を拠出するよう要請。事実上2022年度からの「第6次沖縄振興計画」に向けての陳情。

以上の流れは、「振興策継続」という目標を実現するため、翁長派も反翁長派も一致団結していることを示しています。この流れが、菅官房長官の「振興策継続」発言につながったと考えてよいでしょう。

補助金と基地負担の関係をしばしば「アメとムチ」といいます。この場合、アメは沖縄振興策などの補助金、ムチは沖縄の米軍基地負担です。

ところが、近年の「沖縄vs政府」の関係を見ると、沖縄が「基地反対」というムチを振るい、政府がそれと引き換えに振興策という名のアメを差し出しているかのように見えます。これを私は「ムチとアメ」の関係と名付けていますが、かなり異常な関係になっているといって差し支えないと思います。

2031年までの15年間にわたって補助金をもらうこと、与えることは「善政」とはいえません。沖縄県民にとっても全国の納税者にとっても、いいことはほとんどないと思います。基地反対運動が振興策へのプレッシャーとなっている以上、この運動も継続します。ということは、日本の安全保障にも陰りが差しつづけることを意味します。

政府も沖縄県も「基地負担の代償としての補助金」という構図は公式に認めていませんが、実態としては、あれだけ反対している米軍基地を「お金」と引き換えに沖縄が受け入れる状態を継続することになります。それはとても残念なことです。

今後、財務省の抵抗は予想されますが、安倍=菅=二階ラインで進めている政策ですから、実現する可能性は高いと思います。

しかしながら、10年の計画期間を5年程度に短縮するか、振興予算の上限(単年度)ないし総枠(複数年度)を設定するなどして、無制限な振興策に歯止めをかけないと、基地問題もけっして解決には向かいません。

沖縄県民にとっても、全国の納税者にとっても、またわが国の安全保障にとっても、「振興策を止める勇気」が必要だと思います。

振興策は皆を麻痺させ、疲弊させる「麻薬」だと、いい加減に気づくべきです。

批評.COM  篠原章
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