安倍内閣の支持率急落と「受け皿論」

安倍内閣の支持率が40%を切った。不支持率が支持率を10ポイント以上上回る状態で、日テレ調査に至っては不支持率が50%を超えている。個人的には支持率・不支持率に一喜一憂する必要はないと思うが、過去のデータによれば、支持率と退陣の間には相関関係があることは確かだ。

「安倍内閣退陣論が自民党内でも力を帯びつつある」との報道もあるが、過去10年の内閣支持率を見ると、福田、麻生、鳩山、菅の各内閣は20%前後に落ちこんだところで退陣している。それ以前を見ると、小泉内閣は別格で、40%台を保ちながら退陣しており、つづく第一次安倍内閣は30%前後で退陣を決めている。

過去の例に倣えば、第2次安倍内閣は30%前後に落ちこむまで退陣する可能性は薄い。ただし、政権の「受け皿」ができれば、支持率が30%前後に落ちこまなくとも退陣論は勢いを増すだろう。

が、今のところ受け皿については悲観的な見方が多い。自公政権の継続は間違いのないところだが、岸田文雄、河野太郎、野田聖子各氏は「論外」の扱いになっており、石破氏についても簡単に支持は広がりそうもない。

現在の自民党の最大派閥は細田派(安倍氏の出身母体)、第2派閥は麻生派、第3派閥は竹下(旧額賀)派、以下、岸田派、二階派、石破派、石原派、旧谷垣派の順であり、菅義偉、野田聖子、小泉進次郎氏などの有力者は(かたちの上で)無派閥である。

ただ、自民党自身がジャーナリズムに押されるかたちで90年代以降「派閥解消」の方向で動いてきた歴史はいかんともしがたく、80年代までのように、派閥間の競争による切磋琢磨もあまり見られず、「派閥の領袖」が本当の意味での実力者であるとは限らないのが現状だ。

「派閥の再生と復権」を唱える人もいるようだが、「金を集めて配れる者が派閥の領袖」だった時代はもう追憶の彼方で、地に足の着いた政策論や人に勝る実行力を基準とした政治家の競争と均衡が求められる時代に、派閥間の「力の均衡」による調整だけで苦境を乗り切ることはもはや難しい。必要なのは、保守側の基本姿勢の刷新や政権構想の更新という視点だろう。

戦術的な観点と現態勢の維持という観点を重視すれば、受け皿については「暫定政権」と考えるのが合理的だ。その場合、公明首班もありうるが、自民党内がそれでまとまることはないだろうから、「長老」が身を挺して首班を引き受ける選択肢が浮上してくる。候補は、細田氏、竹下氏、二階氏などだろうが、新味に欠けるのは何とも否めない。

「保守の理念」ではなく「自由民主主義」なるものをあらためて掲げ直し、ここで気風を一新しようとするなら、「受け皿構想」としていちばん望ましいのは女性宰相を誕生させることだと思う。野田聖子氏が最短距離だといわれるが、小渕優子、高市早苗両氏も候補に挙がってくるかもしれない。女性宰相ではなく、小泉進次郎待望論をここで一気に具体化する方法もある。

以上で触れているのはあくまでも「受け皿」論であり、「次世代自民党」のビジョンを描きながらしっかりした受け皿の「可能性」を示すことに成功すれば、自民党は今以上に力を得るだろう。安倍氏自身が「後継者指名を含む自民党の将来ビジョン」を構想・公表すれば、逆に安倍続投もありうるだろうと思う。

 
批評.COM  篠原章
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