ライヴ・レビュー : はいさいフェスタ2018@クラブチッタ(2018年5月5日) 

2018年5月5日午後3時より、川崎のクラブチッタで開催された「はいさいフェスタ2018 音楽祭」を観た。正しいタイトルは「はいさいFESTA 2018 音楽祭 PEACEFUL LOVE ROCK FESTIVAL in はいさい FESTA」で、司会(ナビゲーター)は沖縄市界隈でイベントの企画、DJ、司会業などで活躍する幸田悟、出演者は、きいやま商店、ローリーロールバンド、ディアマンテス、かりゆし58,紫(出演順)。「ピースフルラブ・ロックフェスティバル」とは、毎年7月に沖縄県沖縄市(旧名コザ市)で開催されるロックをフューチャーした音楽祭だが、今回の第15回はいさいフェスタ音楽祭の初日(5月5日)は、15回という節目を記念する企画の一環でOkinawan Rock Dayとされ、ピースフルの主催に長く関わってきた徳山義広氏(コザ・ミュージックタウン運営責任者/サウンド・パッケージ代表取締役)などとコラボすることになったらしい。

これとは別にこの日午後8時より「クラブゴリッタ」と題されたライブ&トークショーも開催された。司会はガレッジセールのゴリ(本名:照屋年之)で相方の川田広樹がサポート、出演は、具志堅用高、アルベルト城間(ディアマンテス)、きいやま商店(リョーサ、だいちゃん、マスト)、かりゆし58(前川真悟、新屋行裕、中村洋貴、宮平直樹)、ネーネーズ(上原渚、本村理恵、沖山美鈴) 、比花知春(旧アーティスト名:CHIHARU、りゅうちぇるの姉)。パフォーマンスを披露したのはきいやま商店とネーネーズだけだった。予想以上に時間のかかった客入れの時間帯には、吉本所属の「宮川たま子&てびちバンド」が間を持たせていた。

はいさいFESTA クラブゴリッタ トークショー(2018年5月5日 クラブチッタ)

はいさいFESTA クラブゴリッタ トークショー(2018年5月5日 クラブチッタ)

ちなみに、はいさいフェスタ音楽祭の2日目(5月6日)は、沖縄民謡の企画ライブ「江戸上り 民謡ショー」と銘打たれ、前川守賢、我如古より子、宮沢和史、ネーネーズ、大城クラウディアが出演者に名を連ねている。

5月5日に行われた上記ふたつのイベントをまとめて簡単にレビューする。

今回のイベント、実質的に二部制だったが(はいさいフェスタ音楽祭とクラブ・ゴリッタ)、両方とも参戦したため午後3時から11時近くまでの長丁場となった。年に数回は観るローリーロールバンドを除き、しばらくぶりに観るアーティストばかりで、経験知が高まった気がした。

はいさいFESTA 紫(2018年5月5日 クラブチッタ)

はいさいFESTA 紫(2018年5月5日 クラブチッタ)

紫については、たびたび辛口の批評も書いてきたが、今日のパフォーマンスはそこそこ丁寧なもの、ほぼ安心して聴くことができた。ボーカルのJJは、ヘヴィメタル・アーミーの頃からあまり好きなタイプではないが、今日の「熱演」は好感が持てた。ジョージはいつもよりクリアな音、ギタリストの二人のツイン・リードも決まっていたと思う。チビのドラムは過剰なまでのスティックさばきがウリだが、今日は心持ち抑え気味だった。それでもバスドラはトゥーマッチで、ぼくが贔屓にしているクリスのベースの音をかき消していた。残念。

はいさいFESTA ディアマンテス(2018年5月5日 クラブチッタ)

はいさいFESTA ディアマンテス(2018年5月5日 クラブチッタ)

 

ディアマンテス。かなり久々なせいで名も知らぬメンバーばかり。1990年初夏に恩納村はサンマリーナホテルのラウンジで弾き語りするアルベルト城間を「発見」して以来、気がついたら28年もの歳月が流れていた。メジャーレーベルへの売り込み競争では、『バッドニュース』の藤田正さんに一歩後れを取ったが、人気バンドとしてここまで続けてこられたことは幸い。コザのパークアベニューの「パティ」でハコバンだった頃が懐かしく想いだされる。それにしてもアルベルトは今も希有なボーカリストだ。何を歌っても説得力がある。

きいやま商店とかりゆし58は、ぼくの守備範囲ではないが、今回はじっくり聴かせてもらった。素直だし、まじめだし、器用だし、思ったよりずっとポップで、売れるだけの理由がちゃんとある。「フォーク」っぽいポップさが好かれているのだろうが、「天才バカボン」のテーマソングの出来損ないみたいな曲はどうしても好きになれない。それもまたエンターテインメントだろうが。

はいさいFESTA ネーネーズ(2018年5月5日 クラブチッタ)

はいさいFESTA ネーネーズ(2018年5月5日 クラブチッタ)

ネーネーズの現メンバー(2016年〜)のステージを観るのはたぶん初。テレビや動画では見たことはあるが。年の割に琉舞的な所作もしっかりしているし、ハーモニーにも重たさがないから、頻繁に聴いていた頃の初代ネーネーズ、二代目ネーネーズよりしっくりきた。こちらの聴き方が変化したせいかもしれない。が、「黃金の花」はやはりいただけない。この歌のファンが多いことは承知しているが、せっかくのメロディを台無しにする歌詞だと思う。メッセージソングの難点を体現するかのような作品だ。「ノーウーマン、ノークライ」のカヴァーにも辛いものがある。このカヴァー、好きな人いるのだろうか?素朴な疑問。

はいさいFESTA ローリーロールバンド(2018年5月5日 クラブチッタ)

はいさいFESTA ローリーロールバンド(2018年5月5日 クラブチッタ)

ローリーロールバンドは、いつもどおり堅実なパフォーマンスを披露してくれた。沖縄におけるロック的感性をいちばんピュアなかたちで表現できているバンドだと思う。残念なのは、いわゆる「沖縄好き」のナイチャーにその「個性」がなかなか理解されないこと。型にはまることを拒絶するローリーのロック精神は、相応の音楽好き、ロック好きでなければ汲み取れないだろう。幸いにして、きいやま商店が「ローリーの弟子」を自認して、ローリーの作品をカヴァーしている。より若い世代にローリー的精神が継承されることが大切だ。

実は今回、第2部に具志堅用高がトークで出演するというので楽しみにしていた。予想通りの素晴らしいトークだった。具志堅用高は、コメディアンのように扱われているが、彼の人生、彼の沖縄はとても深い。具志堅用高の軌跡をもう一度正面から見直したいものだ。

はいさいFESTA クラブゴリッタ (2018年5月5日 クラブチッタ)左から司会ゴリ、宮川たま子、具志堅用高

はいさいFESTA クラブゴリッタ (2018年5月5日 クラブチッタ)左から司会ゴリ、宮川たま子、具志堅用高

なお、第1部の幸田悟の司会はきつかった。沖縄ロック史を説きたい気持ちはわかるが、それは別の場所でやってほしい。沖縄の魅力が「島のゆったり流れる時間」にあると思っている大半の聴衆にはなかなか伝わらない。セッティングの時間を稼ぐためのトークだから長くなるのはやむをえないが、はっきりいって音楽の魅力を高めるようなトークとはいえなかった。

【補足】
実は第1部に相当する「はいさいFESTA 2018 音楽祭 PEACEFUL LOVE ROCK FESTIVAL in はいさい FESTA」よりも、第2部に相当する「クラブゴリッタ」のほうが密度の濃いイベントだったが、入場料金は第1部4,000円で第2部が1,000円(これ以外にドリンク代500円。当日券はぞれぞれ500円高)だった。興業全体の収支が絡むから意図するところはよくわからないが、第2部のほうがお得感が高かった。

批評.COM  篠原章
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