副知事による「埋め立て承認撤回」は越権行為だ

仲井眞弘多元知事による「辺野古埋め立て承認」が、8月31日に副知事によって「撤回」される。だが、知事の代行職に過ぎない副知事が、亡くなった翁長雄志知事に代わり「撤回」するのには大いに疑問がある。これは完全な政治案件であり、最重要案件だから、民意(選挙)に基づいて選ばれた知事にしかできない決裁と考えるべきだ。いくら「遺志」だからといって、代行者が撤回を決裁するのは誤りであり、本来なら次期知事に引き継ぐべき案件である。

「沖縄県事務決裁規程」には以下のように定められている。

第4条 専決者(この場合は副知事ー篠原)は、この訓令の定めるところにより、専決することができる事項であっても、次の各号のいずれかに該当するときは、上司(この場合は知事ー篠原)の決裁を受けなければならない。この場合において、決裁を求められた者が更に上司の決裁を受ける必要があると認めたときは、その決裁を受けなければならない。
(1) 事案の内容が特に重要であり、上司の指示を受ける必要があると認められるとき。
(2) 取扱上異例に属し、又は重要な先例になると認められるとき。
(3) 疑義若しくは重大な紛争があるとき又は処理の結果重大な紛争を生ずるおそれがあると認められるとき。
(4) あらかじめその処理について、特に上司の指示を受けたものであるとき。

「埋め立て承認撤回」という行政行為は、これら4項目のすべてに当てはまると思われる。「撤回」は、その政治的立場にかかわらず、次期知事の決裁案件として処理すべきものだ。「遺志」を最終確認するのは困難である以上、副知事が撤回するなど前代未聞の越権行為である。県当局も越権行為となる可能性は十分承知した上で、知事の代行職に就いている富川盛武副知事ではなく謝花喜一郎副知事に「汚れ役」を押しつけた恰好だ。翁長知事逝去の知らせを聞いても出張先のブラジルからすぐに帰国しなかった富川副知事は、おそらく「汚れ役」を引き受けたくなかったのだろう。

県当局の今回の判断は、政治的な力関係に配慮した結果だろうが、「違法性」の強い決裁だといわざるをえない。こうした決裁に疑問を呈さないメディアも、その役割を果たしているとはとてもいえない。

批評.COM  篠原章
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