参院選挙公報 野次馬批評(本気度ミシラン評価付き)

参院選挙の選挙公報が来ましたよ。年をとったせいか(笑)、ぼくにとって選挙公報は第一級のエンターテインメント。突っ込みどころ満載という意味ですよ。目下、珍しく忙しいのですが、すっかり読みふけってしまいました。

sangiinkouhou

以下、野次馬批評。各候補者・政党の末尾に批評.COM「本気度見知らん(ミシラン)評価」を掲載。どのくらい情熱的に選挙に臨んでいるかを勝手に評価したものです。評価の対象は選挙公報だけ、選挙戦の優劣とはもちろん無関係です。評価は四つ星(☆☆☆☆)〜一つ星(☆)の四段階。なお、記述の内容や評価にはいっさい責任は持てません。あくまで野次馬批評の一環です。

なお、最初にリリースしたバージョンでは、「☆評価」という意味で「ミシュラン評価」という表現を使いましたが、ミシュランから怒られると面倒なので、「ミシラン」という表現に改めました。「ミシラン」は「見知らん」との掛詞という強引で無責任な設定です。

<東京選挙区広報>

まずは東京選挙区。一面のトップは犬丸かつこ候補 (無所属)。つづいて釈量子候補(幸福実現党)、マタヨシ光雄候補(世界経済共同体党)、すずきかん候補(民主党)の順。紙面のどの場所が割り当てられるかはおそらく抽選でしょうから、政党とは無関係な候補が一面に集まってもなんの不思議もないんですが、犬丸さんとマタヨシさん、(政党候補ではありますが)そこに釈さんが加わると、いちばんマジメそうに見えるすずきかんさんが一気に霞みます。お気の毒。

犬丸さんは、現在の選挙制度に憤った末の立候補らしい。福岡の人ですが、自分の主張を広く知ってもらうためにあえて東京で立候補したんでしょうね。明記されていませんが、おそらく個人が簡単に立候補できるシステムではないことに怒っているんだと思います。ちゃんとした組織や資金がない人は、供託金も納めにくいし、ポスターだって貼りきれない。一理ありますが、ニッポンはやっぱり政党政治ですからねえ。この方、元教員で、現在は介護サービスを生業にしているようです。ですから、各政策のなかで福祉介護の部分は説得力あります。護憲派です。【本気度ミシラン☆☆】

釈さん。憲法改正・国防強化にいちばん熱心な幸福実 現党の候補です。幸福の科学という宗教団体が、どうして「強兵論」を唱えるのかぼくにはよくわかりませんが、写真を拝見するかぎり笑顔がソフトな方で、「強兵論」とは直結しにくい。ま、そこが狙い目なんでしょうけど。この方、「ストップ・ザ・ヘアヌード」運動というのもやっていたらしい。どんな運動でしょうね。興味あります。【本気度ミシラン☆☆】

マタヨシさん。別名・又吉イエス。そう、現人神です。沖縄の選挙で常連候補者だったのですが、数年前、自分に投票しない沖縄県民に愛想を尽かして新宿に引っ越した方です。沖縄の知人の情報では、塾の先生としてとても評判よかったとのこと。お兄さんは元県庁幹部。この方の主張にはいちいち肯いてしまいます。喜んでいいのかどうかわかりませんが、ぼくの問題意識とあまり変わらないのですよ。ただ、彼の主張は、現人神・又吉イエスの指導の下に展開される計画経済・共産主義ですから、リベラリズムの立場にあるぼくとはその点が相容れません。【本気度ミシラン☆☆☆☆】

すずきかんさんは現職。民主党ですから厳しいでしょうね。政策について、とくに大きな異論はありません。「細かいところにまで目配りが効いているすずきかん」というイメージで売りたいんでしょうね。バンドやってたみたいです。どんなバンドだったのかな。灘中・灘高のエリートですから、逆に反メインストリーム、サブカル系のバンドだったかもしれません。あれれ、推薦人に河村隆一がいます。だったらビジュアル系?【本気度ミシラン☆☆☆】

二面へ。桐島ローランド候補(みんなの党)。イケメ ン写真家で桐島洋子さんの息子。かれんさんの弟。えっ、ローランドさんは45歳。てことはかれんさんはそれより上か。もうそんな年なんですね。公約を読んで、みんなの党は原発ゼロってことを想いだしました。ところで、みんなの党のロゴって、どういう人がデザインしたんでしょう。【本気度ミシラン☆☆】

大河原まさこ候補。無所属・現職。世田谷に住んでいる頃は、しょっちゅうパンフが送られてきました。東京生活者ネット出身ですが、前回は民主党推薦も受けてトップ当選。今回はわかりませんねえ。微妙でしょう。政策は、原発廃炉政策が一等最初に来ています。TPPも反対。「共に生きる」(共生)が理念みたいです。わかりやすい政策ですが、今の状態で支持が広 がるかどうか。【本気度ミシラン☆☆☆】

丸川珠代候補。自民党現職です。元テレ朝。今回は小倉淳さんや山本太郎さんも出ていますから、タレント系候補は多い。中松さんもローランドさんもマスコミに露出してるし。でも自民現職だから、丸川さんがタレント系ではダントツでしょう。名前が地味なところがまたいいんじゃないでしょうか。政策についてはとくに触れることもありませんが、フツーに自民党です。【本気度ミシラン☆☆☆】

鈴木信行候補。維新政党・新風。昨年6月、ソウルの日本大使館前慰安婦像に「竹島の碑」を縛りつけた方です。安保、TPP反対、天皇中心の強兵国家を再興したいという主張のようです。推薦人に加瀬英明さんの名前があります。加瀬さんはオノヨーコのいとこです。【本気度ミシラン☆☆】

三面。中村高志候補。無所属。政策を見ても、なぜ立候補に至ったのか不明。公約はすごくフツーです。読売新聞によればビル管理会社会社員だそうです。【本気度ミシラン☆】

西野貞吉候補。無所属。元運転手(読売新聞情報)。この人の政策はユニーク。「給与の現金支給化」「キャッシュカードの廃止」「年金を原資とした融資制度の創設」「日本企業の製造拠点を日本に戻す」。他候補にはない政策です。給与の現金支給、キャッシュカードの廃止はたぶんつながってる。一種の景気浮揚策です。でも財布を握っている世の奥様方は許さないでしょうね。年金原資の融資制度はひょっとしたら法的に難しいかも。製造拠点の日本回帰といいたい気持ちはわかりますが、企業の意思決定を歪めることになるとは思います。【本気度ミシラン☆☆☆】

吉良よし子候補。日本共産党。30歳といちばん若い候補です。共産党のなかではかなりスーパーエリートなんでしょうね。高知出身。共産党はどこを切っても共産党で、個性で勝負する候補は、今は皆無なんじゃないでしょうか。昔日の野坂参三、徳田球一、瀬長亀次郎みたいな人が出てくれば、またおもしろいと思うのですが、そういう人はやはり育ちにくいのでしょう ね。ちなみに野坂、徳田は除名。瀬長は沖縄人民党からの転籍組です。政策は、「野党としてはごもっとも」としかいいようがありません。選挙公報もいつもど おり。もう少し新味がほしいところです。【本気度ミシラン☆☆】

さてさて四面。中松義郎候補。いわずとしれた「天才発明家」です。「アメリカ各地でドクター・中松デー開催」などなどの輝かしい経歴とともに「小学校から東大まで無遅刻無欠席」と書いてあります。すご〜 い。なかなかできるもんじゃありません。その主張はそれなりに説得力ありますよ。「いいこというなあ」とは思います。ただし、この方85歳。当選したら任期が終わるのは91歳。骨密度は20代だそうですが…。ちなみにぼくは以前、高校の大先輩でもある中松さんの選挙を、友人に誘われてちょっとだけ手伝ったことあります。ポスター貼りとかw。【本気度ミシラン☆☆☆☆】

小倉淳候補。日本維新の会。元日テレで元江戸川大教授。大学の同級生らしいのですが、大学時代は知りませんでした。立候補したきっかけは、江戸川大学の教え子が「どうせ年金なんかもらえない」と今の日本を諦めかけている現状を知って、ということらしいのですが。ぼくも同様の体験は多々ありますが、いつも「みんなでがんばって制度を変えればいい」とコメント するだけで、選挙に出ようとは思いませんでした。【本気度ミシラン☆☆】

山本太郎候補。無所属。俳優。政策の柱は、もちろん 反原発・反TPP。社会保障充実というのもありました。震災・原発事故で人生が変わった方です。けっして悪いコトじゃありません。7月14日、20日の18時からハチ公前で「選挙フェス」というのをやるらしいです。フェスってなんでしょうね。いってみようかな。【本気度ミシラン☆☆☆】

つづいて五面。森純(もり・きよし)候補。無所属。独立共和党準備委員会代表。読売新聞では唯一顔写真のない候補でした(本人の希望で写真は出さなかったとのこと)。広報には写真ありました。公約はとてもシンプルです。「象徴天皇制の廃止」「大統領制の樹立」のふたつ。ふたつというよりふたつでワンセットですね。森さんはこの公約のことだ けを考えて日々暮らしているんでしょうか。右翼に狙われやすい公約だから、読売新聞には写真を掲載しなかったのかもしれません。【本気度ミシラン☆】

松本みのり候補。無所属。男性。この方の公約もシンプル。天皇・皇后の肖像を掲載した東北復興祈念1万円札を発行し、国民全員に毎年これを一枚ずつ強制的に買わせる。これによって集まった1兆円(年額)を、被災地の高台移転の原資とする。この制度を30年間つづけるんだそうです。よくわからないので、コメントは難しいですね。ダメともいえないし、いいともいえない。【本気度ミシラン☆☆☆】

武見敬三候補。自民・現職。父上は日本医師会長として辣腕をふるった武見太郎さん(故人)。元東海大教授で国際政治の専門家でしたが、1995年に参院初当選。前回は民主党ブームで落選しましたが、昨年、義家弘介議員が衆院に鞍替えしたので、繰り上げ当選したようです。個人的に存じ上げていますが、父上に似た独特の語り口が印象的です。【本気度ミシラン ☆☆☆】

六面。まるこ安子候補。みどりの風。「まるこ・やすこ」という「こ」が二つつく名前は印象的。政策は脱原発、反TPP、護憲、反オスプレイ、教育・雇用・福祉の充実。公約の文字級数が小さくてかつ文字数が多いのが気になります。「みどりの風」は「売り」が今ひとつ明確ではないので選挙はきつそうです。「母。たち上がる。」「子どもたちの未来を守りたい!!」というキャッチがどこまで浸透するか。なんて書くとまるで大新聞の選挙評みたい。我ながら愛情がないなあ。【本気度ミシラン☆☆】

山口なつお候補。公明党・現職。漢字では「那津男」 と書きます。公明党代表。「委員長」という役職はもうないんですね。知らなかった。この方は衆院から参院に回った経歴の持ち主なんですね。珍しい。大政党候補者のなかではもっとも文字の少ない広報。全候補者のなかで唯一「バーコード」も添付しています。ちょっとニクイ演出ですが、全体としてクールです。当選確実だからでしょうか?【本気度ミシラン☆☆☆】

最後はスマイル党のマック赤坂候補。なんといってもトリですよ、トリ。待ってました!とついつい声をかけたくなってしまうエンターテインメント型候補です。むろん東京の選挙では常連。今回の候補者のなかでも又吉さん、中松さんと並んで個性の強い方です。京都大学農学部卒業後、伊藤忠商事に勤務した経験のある方。レアアースの商社を経営しているらしい。お金あるんでしょうね。どちらかといえばエリートな経歴ですが、失礼ながらいちばん清く正しい「泡沫感」があります。ポスターや広報の写真を見ると若々しい40代に見えますが、読売新聞の写真ではほとんど髪の毛のないおじいさん。実年齢は65歳ですから無理もありません。ちなみにWikipediaの写真はスーパーマンのコスチューム。けっこうぶっ飛ぶ写真です。どれがホントのマックさんかよくわからくなってしまいます。意図的なメディア戦略なんでしょうか。そうだとすれば、 写真一つとっても実にエンターテイナーだなと感心します。「セーラー服とリクルートルックの撤廃」「スマイルが出来ない接客スタッフは接客ロボットに代え る」「中高年の恋愛・婚活を推進」「投票率が50%未満の選挙は全て無効とし再選挙」「議員・公務員を1/2にカット」「幸福を総合的に推進する幸福省を創設」などなど公約も相変わらず痛快です。セーラー服撤廃には反対ですが、接客ロボット導入には諸手を挙げて賛成です。【本気度ミシラン☆☆☆☆】

<比例代表区広報>

※ 政党別の紙面上のサイズは候補者名簿の数に応じて1/4から4/4の4種類ある。

新党大地:
紙面サイズ2/4。新党大地は生活(1/4)や社民(同前)よりも多くの候補者を出していることになる。「鈴木宗男」という候補者がいるのだが、写真は別人。そもそもあのムネオちゃんは被選挙権停止中。名義貸し?それとも二代目を襲名した人がいる?と思ったが、どうやら同姓同名の候補を探してきたということらしい。選挙に有利になるんでしょうかねえ。【本気度ミシラン☆☆☆】

社民党:
紙面サイズ1/4。福島みずほ党首のキャッチーなしゃべり方にはいつも感心しますが、前日の深酒が顔の皺やしみ、化粧のノリに現れていることがあります。沖縄の山城さん、当選するかな。この方は沖縄独立論者です。それにしても候補者少なすぎ。福島さんが辞めたり落選したりしたら、いったいこの政党に未来はあるのかと思います。【本気度ミシラン☆】

幸福実現党:
紙面サイズ1/4。尖閣上陸のロックシンガー、トクマを擁する幸福実現党。トクマさんは、尖閣に上陸してホウキをギター代わりに1人ライヴを展開しました。笑ってはいけません。ちなみにトクマさんってミュージシャンとしては器用な方です。歌もそこそこ上手。いろんなタイプの歌を歌える。その分、個性は薄くなりますが。【本気度ミシラン☆】

民主党:
紙面サイズ3/4。民主党に限らず、どうやら候補者名を平仮名表記するのが流行っているみたいですね。たくさんの候補者がいる場合、かえって読みにくいと思うのですが。ツルネン・マルテイさんの片仮名表記が目立ちます。ツルネンさんのキャッチは「目の色変えてがんばります」だって。ちょっと変。78歳の石井一さん、もう引退したほうがいいんじゃないかなとも思いますが、民主党にはやはり人材がいないんですね。【本気度ミシラン☆☆☆】

緑の党グリーンズジャパン:
紙面サイズ1/2。レイアウトは通販みたいで目立ちます。嘉田さんの未来の党のおかげで環境系政党はぐっちゃぐちゃ。立て直しにはまだまだ時間がかかりそうです。いちおうここを「正統」と考えていいんでしょうかねえ。被災者、アイヌ民族代表、ミュージシャン(三宅洋平さん)などいろいろな立場の候補者を寄せ集めています。公約 「スロースモールシンプル」はわかりやすい。わかりやすすぎるというのも欠点かな。【本気度ミシラン☆☆☆】

みんなの党:
紙面サイズ1/2。レイアウトは好きです。シンプルで読みやすい。「闘う改革。」というキャッチも悪くないです。あまり書きたいことはありませんが、本気度は高い気がします。【本気度ミシラン☆☆☆☆】

日本共産党:
紙面サイズ3/4。今回はいつもよりやる気を感じます。「自民党と対決 抜本的な対案を示す。」というキャッチは気に入っています。ホント、真の野党は共産党だけですから(応援しているわけじゃないけど事実)。でも実現可能な対案を示しているんでしょうか?これからしっかりチェックしてみたいと思います。それよりも党の専従活動家には、医療保険も年金も払えるちゃんとした給料を支給してあげてください。お願いしますよ。【本気度ミシラン☆☆☆☆】

生活の党:
紙面サイズ1/4。共産党の下にちょこっと掲載。おまけみたいなサイズです。本気なのかと思います。サイズは大地の半分ですから。先日の党首討論のときも小沢さん、元気ありませんでした。新聞記者と喧嘩したときはちょっと迫力ありましたが、政策の話になると、なんだか覇気を感じませんでした。もうこの政党も幕引きが近いような気がしてなりません。【本気度ミシラン☆】

公明党:
紙面サイズ3/4。キャッチは「実感できる景気回復へ」。与党の強みを全面に出したキャッチですね。自民党に反対できるのは共産党だけ、自民党を抑えられるのは公明党だけ、という現状ででいいのかなあ。【本気度ミシラン☆☆☆】

みどりの風:
紙面サイズ1/4。キャッチは「日本らしさを守る」。日本らしさっていったいなんでしょう。農村共同体的な「共生」がモデルなんでしょうか?政策ももっと別のことばで表現しないと、緑の党や社民と区別がつきません。あ、元農相の山田正彦さん、ここにいたんですね。井戸川かつたかさんって、双葉町長ですよね。う〜ん。いいのかな。代表の谷岡さん、テレビで見る笑顔はまだ作り笑顔です。その点は、福島みずほさんを見倣ったほうがいいでしょうね。福島さんよりは誠実そうな方ではありますが。【本気度ミ シラン☆☆】

自民党:
紙面サイズ4/4(全面)。「日本を、取り戻す。」「実感を、その手に。」って電通のつくったキャッチでしょうか。自信と貫禄に満ち溢れています。でも、政策公約は一切なし。これも自信の表れでしょうが、いいんでしょうかね。政権与党だからって公約を広報に載せないのは傲慢な気もします。山東昭子さん、引退しないんですね。大阪知事だった太田ふさえさんの写真、テレビで見るよりずっと綺麗です。丸山和也さんの写真は好きです。とても政治家には見えません。ただのおっさんです。わたなべ美樹さんもこちらなんですね。知らなかった。【本気度ミシラン☆☆☆】

日本維新の会:
4/4(全面)。全面は維新と自民のみ。すごいな。キャッチは「逃げずに真正面から」。これも悪くない。でも「昇り龍」の臭いがしないんだよなあ。下馬評では「停滞」が予想されていますが…。石原慎太郎さんの写真は、あまりよろしくない。修正かかってるけどよくない。こういうところが意外に大事なんじゃないでしょうか。候補者の写真を見るかぎり、「顔の出来ていない人」もちらほら。玉石混淆かも。アントニオ猪木さんの写真がどうしても目立ちます。浦添市長選に予想に反して落ちてしまったギマさん、維新の候補になってるんですね。これも知らなかった。【本気度ミシラン☆☆☆】

批評.COM  篠原章
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