住民訴訟に負け続ける三流自治体・那覇市の刷新に取り組む市議たち

住民訴訟で負け続ける那覇市がまたやらかした

新聞やテレビでまったく報道されていないようだが、那覇市新都心(おもろまち)にある那覇市上下水道局の駐車場の賃貸借契約について、那覇市議会で厳しい追及が続いている。先頭に立っているのは自民党の奥間亮市議で、最近の議会本会議における自分の持ち時間の大部分をこの問題の追及に充てている。これに「なは立志会」の上里直司市議が続き、無所属の前泊美紀市議も参戦している。

この問題は、那覇市行政にかなり深刻かつ重大な影響を及ぼすと思われ、「住民訴訟を起こされては最高裁で負ける」(最近では孔子廟違憲訴訟)のが常態化している那覇市が、「またまたやらかしたのか!」と市民を大いに憤慨させるような案件だ。元をたどれば翁長雄志前市長時代の「負の遺産」ともいえそうだが、城間幹子現市長施政下の事件であり、市長は責任を持って対処すべきだと思う。

問題の駐車場は、もともと上下水道局が管理していた5,563平米=約1,700坪の平面駐車場だが、昨年7月より大和ハウス系の大和ハウスパーキングが那覇市と賃貸借契約を結んで管理している。3月の入札で決まった契約だが、落札した大和側の提案による年間借受料は9,500万円で、市が示した年間最低貸付価格2,700万円を大幅に上回り、2番目の業者の提示額約5,000万円の2倍近い。駐車場から上がる収益を受け取る代わりに那覇市に上納金(貸付金または借受金)を払うという契約だ。

そもそもこの落札金額からして怪しいが、契約から1年も経たない今年2月、大和ハウスパーキングはコロナ禍の大幅減収を理由とした貸付価格の「減額」を願い出て、減額が認められない場合は契約を解除するが、違約金は免除してくれと言いだした。常識を超える入札額を提示して落札しながら、「やっぱり儲からないから撤退する。コロナに起因する不可抗力だから許してくれ。ついでに違約金も免除してちょうだい」というわけだ。

これに対して那覇市は、「他の業者との公平性の観点から減額は認められないが、コロナによる不可抗力と見なし、解約はやむをえない。市議会さえ認めれば違約金(4,900万円と算定)も不要とする」と回答している。

規程もないのに違約金を免除?

契約書類には、解約の場合の違約金は義務付けされているが、違約金免除規程はいっさい存在しない。免除の法的根拠も不明である。しかも、違約金の免除は、契約が解除されてはじめて発生する行為のはずだが、契約解除も行われていない4月末の段階で取り交わされた大和パーキングと那覇市の合意文書に、違約金免除の項目も入っている(市議会の承認があればという制限付き)。奥間、上里、前泊市議の問題提起もあって、那覇市による違約金免除(放棄)案は6月28日(月)の市議会で否決される見通しだ。(6月28日追記: 否決されました。採決賛否一覧

大和ハウスパーキングは大和ハウス工業の子会社だが、大和ハウスは、沖縄初の30階建て高層マンション「リュークス(ツインタワー)」の建設(施工は清水建設)を伴う再開発事業をオリックス不動産、大京とともに手がけている。このときも、那覇市(当時は翁長雄志市長)が絡む土地取得に関して、不自然な地目変更など不透明な部分があったが、いつのまにかうやむやになってしまった。

真っ黒々な案件がはびこる那覇市

大田県政や翁長県政(那覇市政)の告発に力を注いできた沖縄在住のジャーナリスト、上原正稔さんはいう。

沖縄はこんな不透明な取り引きだらけだ。県や市が、本土や沖縄の私企業の不正利得に平気で手を貸している。グレーどころか真っ黒な案件も多く、たいていの場合に、首長か政治家か役人が絡んでいる。いま自分が取り組んでいる那覇市農連市場跡地の再開発疑惑も真っ黒々だ。詐欺的な登記変更さえ市当局は容認している。

今回の那覇市上下水道局駐車場の貸借問題にも不可解な点が多い。詳述は避けるが、駐車場賃貸借契約を大和側と結んだあとで、那覇市がミニ再開発に着手し、その再開発に大和ハウスを絡ませる予定だったのかもしれない。そのための高額入札だったと考えると合点がいく。だが、コロナ禍でプロジェクトが停滞し、痺れを切らした大和側が損失を最小限に留めるため、解約という手段に訴えたのではないか、と邪推している。

また解約後、那覇市はふたたび駐車場の賃貸借契約のための入札を行うことになるが、その場合大和ハウスパーキングは再参入できるという。あらたな入札により、大和側は契約金額を合法的に減額することも可能だ。ただ、解約すれば駐車場の原状復帰(更地化)が必要となるが、その点がどう処理されるのかも注視する必要はある。

杜撰な行政

大和ハウスパーキングを優遇するかのような那覇市の行政措置の背景には何があるのか気になるところだが、最大の問題は、孔子廟違憲訴訟でも露呈された那覇市行政の杜撰さである。業者とのずぶずぶの癒着、政策の名を借りた首長など政治家への忖度、職員の遵法意識の欠如…。那覇市行政は「行政の悪徳」のオンパレードだ。

那覇市議会のようすをオンラインでチェックしているが、市職員が市議の質問にすぐに答えられるケースの方が稀だ。質問を受ける度に議長に「休憩」を求め、しばらく経ってからしどろもどろの答弁をしている。久高友弘市議会議長に「答弁の準備がまるで足りない」と叱られる始末だ。市民はこれを見てどう感じるだろうか?

残念ながらこれが那覇市の実態である。こんなんで市政は持つのだろうか。沖縄県の方がいくらか逃げ上手だが、正直いうと似たり寄ったりである。沖縄県も那覇市も首長は「オール沖縄」を標榜し、基地反対運動に熱心に取り組んでいる。彼らの「基地反対」の主張を端から否定する気はないが、「それどころじゃないだろ!」というのが率直な感想である。市民の方をまるで向いていない、二流どころか三流の自治体・行政機関だと思う。先の上原正稔さんの言葉を借りれば「骨の髄まで腐っている」ということになる。

唯一の救いは市議の活躍

唯一の救いは健全な市議が果敢に闘っていることだ。奥間亮、上里直司、前泊美紀などの若く有能な市議の議場での奮闘には心からの拍手を送りたい。地元メディアも彼らに少しは加勢していいようなものだが、「無視」がデフォルトだ。いずれも「オール沖縄」に距離を置く市議だからだとぼくは思っている。相変わらず歪んだ言論空間である。

だが、こんなことを続けていると、市政はガタガタになってしまう。政治家、識者、メディアを始め、真っ黒黒を知りながら放置している連中も覚醒してしかるべきだ。勇猛果敢な市議の今後の活躍に期待するほかない。

【追記】
那覇市議との付き合いがとくに深いわけではないが、エールを送りたくなる若手市議はほかにもいる。昨年、琉球大学国際地域創造学部に入学して正規の「学生」としての顔を持つ大山孝夫市議(自民党)、今春に苦労の末高校を卒業した奥間あやの市議(無所属)も有為の人材である。「オール沖縄」の議員のなかにも有能だなと思う人がいる。昨年12月に副市長候補にあげられながら、なんと時間切れで選任されなかった社会大衆党の平良識子(さとこ)市議も「社大党復興」の旗手になりうる政治家だ。なお、前回の沖縄県知事選に出馬して「本当の意味での政治の素人化」を訴えたカネシマシュン氏も7月の那覇市議選に出馬する予定だが、当選すれば市議会での議論はいっそう豊かなものになるだろう。

批評.COM  篠原章
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