新型コロナウイルスの国・地域別死亡率(3月10日現在)

懸念されるイタリアとスペイン、中国はピークアウト?

3月10日午前の段階での世界の新コロナウイルスの死亡率を更新した。感染者数、感染者数増加率(新規)、死亡者数、快復者も併せて掲げている(いずれも感染者数上位20ヵ国を対象として作表)。依然としてイタリアが深刻な状況だ。死亡率も高まっている。イタリアだけでなくスペインの感染者数が増えているところも懸念される。感染者数増加の数値を見るかぎり、中国ではすでにピークを越えたとみられる。韓国もピークアウトに向かっている可能性がある。日本の場合はまだ不明だが、感染者数保険適用や検査能力の改善などによるPCR検査の強化が3月6日に始まったので、今後、感染者数はさらに増加する見込みだ。ただし、当面は「隠れ感染者」の顕在化として捉えるのが望ましい。したがって、流行の深刻化と必ずしも直結した増加ではないとう点には留意しておきたい。

ピーク時には1日42万人の感染者(受診者)という厚生省の推計値

3月6日、厚労省は最悪のシナリオを想定し、医療提供体制を整備するよう求める各都道府県に通知を発出した。それによれば最悪のケース(何の対策も講じない」または「効果が出なかった」との条件設定)では、1日あたり約43万人の患者が受診することとされている(下表参照)。1日あたり約43万人ということは、感染者数累計が百万単位の規模に達する可能性を示唆している。もっとも、これはあくまでも最悪のケースの想定であって、こうした事態に至らぬよう関係機関、関係者は対策を怠るなという目的で公表されたものだ。感染症の重症患者に対応できる病床は全国に5000床しかないということだから、感染の威力を弱め、重症患者を効果的に治療できるシステムの確立が求められている。

今後は感染者数の増加に一喜一憂するのではなく、重症患者数、死亡者数(率)の推移を最重視したほうがよいだろう。

本当の死亡率はかなり低いが…

このコラムでは死亡者数を感染者数で割ったものを「死亡率」としているが、インフルエンザがそうであるように、実際の感染者数は推計するほかない。感染者数は医療機関を通じて政府が把握している人数に過ぎない。したがって、最終的な死亡率は推計された感染者数を分母に置かなければならない。つまり、本当の死亡率はコンマ以下になるのではないか。ただし、明るみに出ている感染者数を分母にすることにはやはり意味がある。病の実態の一部と治療の実態がわかれば「傾向」を把握できるわけだから、有効な対策を講ずるためには不可欠だと思う。

批評.COM  篠原章
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