「ますらおの歌(7)」(『正論』22年2月号)は「満州行進曲」
月刊『正論』連載「ますらおの歌」の第7回は「満州行進曲」。
朝日新聞が歌詞を公募し、慶應義塾応援歌「若き血」を出世作とする堀内敬三が曲を付け、1937年1月に日本ビクターから発売されて大ヒットした楽曲である。
朝日新聞と毎日新聞は、1937年以降、日中戦争を正当化するための世論形成に率先して協力した。そのための有力な手段が、新しい軍歌・戦時歌謡の歌詞や楽曲を募り、レコード化・映画化してヒットさせることだった。「満州行進曲」は、そうした新聞による戦時協力のもっとも初期の「成果」であり、以後、両新聞は競うように軍歌・戦時歌謡(さらに同名映画)を企画し続けた。軍からの圧力に屈したというより、軍を進んで後押ししたといったほうがより適切だ。
戦後になってからの朝日、毎日の左側に寄った論調は、戦時下での両社の親軍的な論調の「反省」にもとづくものとされている。だが、「特定の言論」に与して、敵対する言論を黙殺もしくは攻撃するという姿勢は、戦前から一貫して変わらない。
新聞は言論の自由を尊重するのではなく、言論の自由を壊すことによって生き延びていると感じるのは、ぼくだけだろうか?
新聞が世論形成に与える影響力が大幅に低下した今、彼らに求められているのは新聞そのものの存否を問う姿勢である。
今月の月刊正論は、ちょっと早めの12月25日発売です。ぜひどうぞ。
批評.COM 篠原章