これ以上語りたくない「ジャニー喜多川の性加害問題」

山崎元の提案でジャニー喜多川の性加害問題は決着?

『ダイヤモンド』が、ジャニーズ事務所の会見を「企業経営」「危機管理」という立場から分析した経済評論家の山崎元氏の提案をアップした。
「感性批評」や「忖度批評」が横行する状況の中では「珠玉」の論考といえる。

山崎氏は、
(1)被害者に対するフェアで十分なケア
(2)所属タレントが十分活躍できる条件整備
(3)藤島氏および事務所社員の利益
の三点に絞って論じている。

東山紀之新社長の「適格性」に大きな疑問を示しながら(井ノ原快彦の起用が望ましい、とする)、被害者のケアとしては100万単位ではなく「1000万円というサプライズ」を用意し、「ジャニーズ事務所」という社名は変更すべきだと主張し、ジャニーズのタレントを起用している取り引き先企業は海外からの批判も含めて今後の対応を判断すべきで、「契約の即刻打ち切り」を示唆している。メディアによる「魔女狩り」を抑止するする観点から提案された(3)も含め、望ましい解決策だと思う。

疑問の残る松尾潔の山下達郎批判

それはそれとして、「恩(義理)と人情」を重視する山下達郎が、松尾潔との契約を打ち切った一件が宙に浮いてしまった恰好だが、「(山下達郎に対する)ファンの心理」が絡むこの問題には容易ならざる一面があると思う。山下のスマイルカンパニーのような弱小企業の対応と、ジャニーズのタレントを起用する大企業の対応とはどうしたって異なる。熱烈なファンは山下の姿勢をつねに注視しているから迂闊なことはいえない。が、ジャニーズ事務所批判を含む松尾の言動は、山下達郎に「迂闊な発言」を求める事態を引き起こした。

スマイルカンパニーは、松尾潔を切ったことでジャニーズ事務所寄りの姿勢を示したように見えるが、果たしてそれが「真相」なのだろうか。ブラック・ミュージックに詳しい松尾が山下達郎(スマイルカンパニー)の「威光」を背景に仕事の幅を広げてきたことは間違いない。松尾本人の才能は山下達郎によって育てられてきた、といっても過言ではない。ジャニーズ事務所を批判したことで、山下達郎が「裏切られた」と感じてもやむをえなかった。というより、達郎は「アーティストの政治的発言」がいかに危険か熟知しており、人権問題が政治利用されかねないジャニーズ問題とは距離を置くべきだ、という立場を取っただけだと思う。「正義感」の強い松尾が、過去の経緯を棚上げして(松尾は関ジャニ∞の番組にも6月までレギュラー出演していた)、「俺は反省した。達郎も反省せよ」といわんばかりの対応に終始したことも達郎サイドの怒りを増幅することになったと思う。この後松尾は、急激に「政治化」し、政府によるALPS処理水放出に反対する声明にも署名している。合理的に考えて、ALPS処理に反対する理由など見当たらない。「風評被害」に対する補償が重視されるようになるだけだ。一部の政治勢力を応援するような署名に参加して何の意義があるのか。

ジャニーズ問題への「個人的」対応

2015年に雑誌の取材で山下達郎と話をしたとき、山下は「日本のカルチャーにおけるクリスチャニティ(キリスト教またはキリスト教精神)の普及のあり方って重要だと思いませんか?」とぼくに問いかけてきた。ちょうどその頃同じ問題意識を持っていたぼくは「その通りだと思います。いつか追求してみたいテーマです」と応えた。そのときぼく「達郎の視野は驚くほど深く広い」と感嘆した。あれ以来、クリスチャニティの問題追求は宿題となったままぼくの心の奥底に張り付いているが、ほとんど進展は見ていない。

そうか、そういうことなのか。いまぼくがなすべきことを再認識させられたという意味で、ひょっとしたらジャニーズと松尾潔の一件は大きな刺激をもたらしたと考えたほうがよさそうだ。

いいたいことは山ほどあるが、この件はこれまで。そう思うことにしよう。

批評.COM  篠原章
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