「ますらおの歌(38)」は「出征兵士を送る歌」—講談社が社運を賭けた公募軍歌

『正論』(産経新聞社刊)に好評連載中の「ますらおの歌」。2024年10月号所収の第38回目は「出征兵士を送る歌」(1939年/キングレコード)である。

戦前の大衆向け総合月刊誌の雄といえば、大日本雄辯會講談社(現・講談社)発行の『キング』(1924年創刊/推定発行部数100万部)。現在は、傘下のレコード会社(キングレコード)にその名を留めるだけだが、講談社も、朝日新聞、毎日新聞のなどの大手ジャーナリズムの戦争協力・戦争礼賛の姿勢と競うような経営方針をとり、1939年には同社が発行する『キング』など全9誌に広告を掲載して、社運を賭けた軍歌の公募に踏み切る。歌詞に対する応募総数はなんと約13万通。新聞社が公募する軍歌の応募総数はせいぜい2〜3万通だったので、文字どおり桁違いの大成功だった。講談社の影響力は、現在のNHKに匹敵するほどの大きさだったのである。その結果生まれたのがこの「出征兵士を送る歌」だ。赤紙が届いて一介の市民が入隊するとき、全国の町内会や職場で合唱される定番の歌となった。

 

 

批評.COM  篠原章
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