1999年のコザ–『ハイサイ沖縄読本』番外編

1999年1月19日(火)1999年のコザ—『ハイサイ沖縄読本』番外編

財界系シンクタンクの主任研究員である友人のUKさんが大学の講義で沖縄へ行くという。わが沖縄観をよくわかってくれている数少ない友人の一人である。宿泊はコザ。講義の合間を縫って、夜のコザを徘徊したいというのでそのための情報を提供。以下、UK氏宛篠原発のE-MAILより。いうなれば『ハイサイ沖縄読本』番外編ですかな。

 

UK様

沖縄行きと聞いて羨ましい。こちらはもう身動きがとれない忙しさ。例によって仕事が貯まりすぎて自主廃業寸前。信義もくそもあったもんじゃない。もうデタラメなほど。

さてさてご所望の沖縄情報。UKさんの泊まるシティプラザはコザでは高級ホテルですよ。一泊7,000円以上します。ちなみにデイゴは5,000円。
コザはですね、食事は期待できません。東京的な意味ではね。へんなレストランとかね、食堂とかはありますよ、たくさん。ま、いくつか名物食堂的なものをご紹介しておきましょう。
シティプラザから国道を北のほうに歩いてゴヤ十字路というコザのヘソに行く。国道(ゴヤ大通り)とゲート通りの交差点。で、ゴヤ十字路の角に琉球銀行があるんだけど、基地のゲート寄りの並びに<南京食堂>という中華屋があります。ここの点心はけっこういけます。昼はやってません。
で、そのゴヤ十字路の手前、シティプラザからみて左側の国道沿いにモスバーガーがあるんだけど、その裏手にステーキハウス四季(フォーシーズンズ)というけっこう有名なステーキ屋があります。いわゆる鉄板焼きスタイルで、目の前で焼いてくれる。ちょっと脂っこいけどね、いちおうコザでは名物ステーキ屋。週末なんか米兵とその家族しかいないこともある。アメリカの田舎町の高級レストランみたいでいいよ、トータルな印象は。昼は廃墟にしかみえない建物。腹一杯食べて2,000円~2,500円。味はね、デイゴホテルのステーキのほうがうまいとは思います。雰囲気では四季の勝ち。<四季>の二階はやはり有名な中華屋だけど、きっとまずい。

さて、ゴヤ十字路をさらに北上すると左手に<パークアベニュー>という通りがある。
小洒落たショッピング街。この通りには輸入雑貨屋なんかがいくつかあってね、東京より安い値段でいろいろ売ってます。通りの奥の方、左手に<地球雑貨>という店がある。ここは、ぼくのお気に入りのひとつ。土産にもなるものも売ってる。そのさらに奥の、元墓場だったところに<コリンザ>というショッピングビルがあります。買い物は勧められないけど、沖縄らしいファストフード系レストランがいくつか入っています。ピザハウス・ジュニアなんかで軽食というのも悪くない。上の階には劇場があります。出し物によってはお金払って見てもいいかも。歌と芝居にはけっこうおもしろいものもあります。ここの館長は玉城満(元りんけんバンドで笑築過激団座長)。

パークアベニューの入り口近くに照屋楽器店というのがある。これが照屋林賢の実家ですね。その照屋楽器の裏手に行くと、林賢の親父で沖縄を代表する芸能家の照屋林助が経営する三味線店やデイゴホテルがあります。
ゴヤ十字路の琉球銀行の北隣にFMチャンプルーという放送局があります。元りんけんバンドのフロント・藤木勇人がメインのパーソナリティで放送してます。で、その藤木の経営する<まーちゅ>(仲宗根町5-3/982-1212)という食堂がゴヤ十字路近くにあるんだけど、ここはけっこういけるらしい。夜のみの開店。同名のミニコミが出ていて、ホテルなんかにおいてある。ライヴ・スケジュールも出ている。

さて、中の町。国道を挟んでシティプラザの反対側に広がる一大社交街。お店はいろいろあるけれど、中の町の交番から北に向かうちょっと狭い通り沿いにある揚羽蝶という飲み屋の足ティビチは最高。沖縄一美味しいよ、たぶん。交番は中の町の南より、ちょっと奥に入ったところにある公園の脇にあります。ディスコで有名なピラミッドからワンブロック北の交差点を西に入ると公園と交番があるはず。電話番号はわからない。ちなみにピラミッドの南側、国道沿いには諸見食堂という食堂がある。ここは、そばもあります。深夜まで営業。

そばだと、宮古そば「愛」が中の町の真ん中あたりにある。深夜営業。とくに美味しくはないけど、そば屋の少ないコザでは貴重な店。

国道より一本西側の、中の町の中通りには<ハーブ>というエスニック料理屋。これはまあまあいける。インテリアがいいよ。もしかしてつぶれてるかもしれないけど。それからエスニックと言えば、国道を北中城(那覇)方向に向かってシティプラザから1キロほどいった左側にバラックという深夜レストランがある。小さな店なので見過ごしてしまうかも。ちょっと大きなマンションの隣。ここの料理はコザでいちばん美味しいと思います。カレーとかそんなものだけど、難を言えば、できるのが遅い。とっても遅い。バラックにいたる途中、国道の北側にリマレストランという中華・メキシコ・和食混合のレストランがある。美味しくはないけど、一見の価値有り。とってもヘンだよ。ヘン。

国道をゴヤ十字路よりさらに北に行くとコザ十字路(紛らわしいので気をつけて)というのがある。歩くのは大変なのでタクシーを利用してください。で、コザ十字路を左折(西へ)すると最初の信号が吉原。その信号を右に曲がると一大風俗地帯の出現です。そうです「吉原」、その名もズバリですが、ソープ街ではありません。売春バー、旧青線的な印象の場所。もともと黒人の遊び場だったと言いますが、お姉さんは年増が多い。明らかに還暦を超えていると思われる女性もいる。坂道が多くてたいへんですが、30分ぐらい散策する価値有りです。客引きもいないので歩きやすい。何よりも町全体に悲哀が漂っていてステキです。危なくはないのでごゆっくり。

それからゴヤ十字路から西に延びるゲート通り。左側にはフィリピンバーが2~3軒あります。風俗というより、女の子つきのワンショットバー。ビールなどは1杯700円~800円ぐらいです。1杯ごとの精算ですから、これもぼられることはありません。女の子にせがまれるスペシャルドリンクは1,000円。たんなるウーロン茶です。別に女の子にドリンクを買ってあげなくとも店にはいられますが、ダメだしをしているうちに女の子は離れていきます。ま、30分で2~3杯買ってあげて、自分もビールを2杯程度飲むとトータルで5,000円程度ですね。女の子の肩に腕でも回しながら、日本語と英語のチャンポンであれこれ世間話したり、カラオケしたりというのが正しい遊び方。気に入られると誘われるけど、それは昼間の短いデートだとのこと。しかも手を繋いでショッピングセンターに行く程度。ある女の子が気に入って、仄かな恋心を抱き、4日ぐらい通い詰めたりしちゃった親友がいる。それでもトータルで2万円も使わなかったという。手を握りあったりキスしたりして30~40分ずつ毎日。デートの約束までしたけど、結局行かなかったんだって。でもね、それでよかったんでしょうね。切ない話です。

追伸1:民謡クラブでは、中の町南端のグランド通り沿いの<姫>、中の町北よりの<なんた浜>が有名どころ。ま、いちどは経験する価値があります。二度行くほどのことはないと思いますが。姫は我如古より子さんの店、なんた浜は嘉手苅林昌の息子・林次さんの店です。姫のがいいかも。

追伸2:コザと北中城の境界近くに<プラザハウス>というショッピングセンターがあります。最近新築してちょっとつまらなくはなりましたが、もともと米軍用のショッピングセンターでそれなりの趣があります。A&Wの親会社の肉屋(イバノ)がやっている一階のスーパー(沖縄版紀ノ国屋・明治屋)、二階のエスニック家具屋などを覗いたり、表側の駐車場脇にあるタコス屋やA&Wで軽食をとったりというのも、奥様とご一緒の時は悪くはないかな。

2016年12月『ナビィの恋・コザ情報99』から改題しました。

 

 

批評.COM  篠原章
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