台風21号に際して次期沖縄県知事に望む—那覇空港を代替・補完する新空港を!
台風21号による被災で、関西国際空港が機能不全に陥っている。今日になって連絡橋が一部開通すると同時に、神戸空港までの航路も復活して、閉じ込められた3千人の旅客も無事「救出」されている。
海外や国内各地から訪れていた旅客のなかには、神戸空港から空路で帰国・帰郷できるようになった人も多いという。関空が閉鎖されているあいだ、航空貨物の一部も代替的に神戸空港を活用できる。
もし神戸空港がなかったら、いったいどうなっていただろうか。手狭な伊丹だけでは十分な代替・補完機能を発揮できなかったに違いない。考えただけでゾッとする。
神戸空港は難産の末に生まれた。革新党派を中心に「環境を破壊する」「財政負担が大きすぎる」「京阪神圏に3つ目の空港は不要だ」「金儲け主義だ」といった理由で、激しい反対運動が展開された。
これに対して「防災拠点として活用できる」「他の空港が機能不全に陥ったとき代替・補完的な機能を発揮できる」といった反論も示され、1971年の発案から35年目にしてなんとか開港にこぎ着けた(2006年)。
反対意見には原案を改善し、強化する力があるから、反対派も大きな役割を果たしたと思うが、結果的に「反対派」に引き摺られないで本当によかったと思う。
開港してからも、他空港との競合もあって経営は盤石とはいえなかったが、LCCの就航や海外からの旅客数の急増に助けられて、今はオリックス傘下の民間空港として運用されている。
日本では、安全保障の概念も含む「防災」が国を挙げての課題となっている。今年のように天災が多いと特にその思いを強くする。交通インフラは物流の要であり、国民・住民の暮らしだけではなく製造業、サービス業、観光業も支えている。防災に強い交通インフラを整備する一環として、民業が成り立ちやすい規制緩和を進める一方、地域のインフラを複線的に再構成し、地域間の連携を強化する防災体制・安全保障体制をつくる必要がある。それが今回の一連の災害の教訓だ。
那覇空港には第2滑走路ができつつあるが、離島における旅客・貨物輸送と旅客や島民(県民)の安全を確保するためには、万一の場合に備えて、那覇空港の代替・補完機能を有する防災型の新空港を設置することが急務だ。うまくことを進めれば、基地負担の軽減にもつながる。
沖縄県知事選の予定候補者・佐喜真淳氏の公約には、幸いにして「新空港整備」が入っていたが、記者発表を聞くかぎり、危機感が薄いと思う。公約がたんなる「お題目」に終わらないよう、支援者にはぜひ佐喜真氏のお尻を叩いてもらいたい。
同じく予定候補者の玉城デニー氏だが、まだ具体的で詳細な公約を発表していない(9月5日現在)。「21世紀沖縄ビジョン」の踏襲といった、曖昧模糊としたレベルでの提案に留まっている。離島である沖縄では、党派を超えて空港インフラの整備・再構築を急いで考えなければならない。安保という概念を含む「防災」全体に対するデニー氏の姿勢も不鮮明だ。これまで衆院議員を4期も務めていたのだから、そのくらい念頭にあると思うが、今のところ「翁長知事の遺志」(「辺野古移設阻止」「イデオロギーからアイデンティティへ」)ばかり強調されて、沖縄の将来像がまったく見えてこない。このまま選挙戦に突っ走るとしたら、とても残念なことだ。
【補足】
現在の沖縄における基地反対運動には、安全保障という概念を含む「防災」という視点が圧倒的に欠落している。そのせいもあって安保・基地をめぐる議論はいつも平行線だ。もっとも、政府の側もこの問題に関するしっかりした論点を示せていないが、政府と沖縄県は、防災体制の整備と基地負担軽減プランや基地跡地利用プランを「統合」した計画をできるだけ早く示す責任がある。