産業革命遺産の登録問題〜韓国からの非難をどう受けとめたらいいのか

Korean Attacks on Japanese Registration In the World Industrial Heritage List

世界記念物遺跡会議(ICOMOS)の勧告によって、申請中の「明治日本の産業革命遺産(主として九州・山口)」の世界遺産登録が有力となったが、韓国政府は、候補となっている施設の中に第2次大戦中の「強制労働」の現場となっていたものが含まれていることから、激しく反対して各国でロビー活動を展開している。

朝鮮人が半ば強制的に徴用された事実はあったが、その規模や特徴、はたまた「強制労働」という概念の定義については、未だに確定されていない。韓国政府は600万人を越える強制徴用の労働者と100万人を越える慰安婦が存在したと主張しているが、当時の半島の人口構成から行ってありえない数字だ。ただ、規模の大小を問わなければ、強制徴用そのものは行われたことは事実だから、日本政府も「強制徴用はなかった」と抗弁することはできない。「日本人も徴用されたのだからおあいこ」などと主張するのも混乱を招くだけだろう。

しかしながら、今回の登録申請は「幕末〜明治期の産業革命」を記念する施設としての登録申請だから、1943年〜45年にかけて行われた強制徴用と施設の歴史を直結させて、「ユネスコは世界遺産登録を拒否すべきだ」と主張する韓国側の姿勢にも無理があるといわざるをえない(下表参照)。

写真は、2000年頃、まだ三菱の所有地だった頃の端島(軍艦島)を撮影したもの。異様かつ壮観なその姿は、日本資本主義の「動力」として一時代を築いた、端島の勇ましくも哀しい歴史を体現している。多くの労働者が、たこ部屋的な労働条件に苦しみ、ある者は逃亡を計り、ある者は自ら命を絶ったという。大部分が日本人労働者だったが、もちろん朝鮮人も含まれていた。邪悪な植民地主義と非難することもできる。資本主義の矛盾と攻撃することもできる。が、どんなに非難と攻撃を繰り返しても、歴史をやり直すことはできない。ただ、折り重なる彼らの屍の上にぼくらのささやかな栄華が生まれたことだけは忘れまいと思う。

世界遺産の登録には、自戒の意味もあり、感謝の意味もある、ということだ。軋むような心と先人への畏敬を込めながら、ぼくたちの歴史を振り返りたい。

世界遺産に登録申請中の日本の産業革命期(明治期)の構成資産

世界遺産に登録申請中の日本の産業革命期(明治期)の構成資産

 

端島(軍艦島)。朽ちた外観。

端島(軍艦島) 朽ちかけた外観

端島(軍艦島)。幹部用社宅。

端島(軍艦島) 幹部用社宅

端島(軍艦島) 作業員用社宅

端島(軍艦島) 作業員用社宅

 

批評.COM  篠原章
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