やちむん主演映画『一生売れない心の準備はできてるか』東京初の上映が始まった!

「沖縄最古の劇場」というフレコミに釣られて首里劇場を初めて見たときは、まだピンク映画の上映館だった。昭和の木造映画館にしてはお洒落な佇まい、それは言い様もなく素晴らしかった。

だが、すでにあちこちガタが来ていて、琉球王朝時代の皇太子の館だった中城御殿の跡地にほどちかい上品な首里の街の一角に、隙間だらけの外壁からエッチな声が漏れ響く様は、これもまたなんとも言い様がない、妖しい匂いを放っていた。

その首里劇場を借りて、オキナワン・ミクスチャー・フォーク(?)を代表する〈やちむん〉が、結成25年ライブを決行したのは、2016年のことだった。

二階席は危険度が高いので使用禁止、ステージはテーゲーな補修の跡だらけ、トイレは真っ暗で汲み取り式、「おんぼろだが俺が最古なんだぜ」と自己主張したい劇場と、「売れない」ことを「売り物」にしたいやちむんサウンドとのつりあいがなんとも絶妙で、実に心地よかった。

この日の2ステージ分の映像から、奇才・當間早志監督が1本の映画一生売れない心の準備はできてるかを創りあげた。「売れない」のにけっして物怖じしないリーダー・奈須重樹のインタビューを織り交ぜながら、やちむんにしてはずいぶん豪華絢爛なライブ映像(総勢18人のバックミュージシャン!)が絡む作品で、見終わる頃には「やちむんを知らないのに知り尽くした気になる」素晴らしい映像作品に仕上がっている。出演者には、八重山民謡の雄・新良幸人、現代コザ・ロックを体現するローリー、ウクレレYMOでお馴染み、栗コーダーカルテットの関島岳郎もいる。

東京では初の御目見得で、4月26日〜5月2日にアップリンク吉祥寺での上映である。お時間のある方もない方も、ぜひご覧あれ(5月には京都、厚木、8月には宇都宮で上映予定)。

なお、4月27日の舞台挨拶にはあがた森魚さん、5月1日には石川浩司さん(元たま)が立つ(いずれも上映終了後)。

一生売れない

 

批評.COM  篠原章
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