辺野古埋立承認問題百条委員会の行方

沖縄県議会が「百条委員会」を設置し、仲井眞知事の辺野古埋立承認を追及している。

「百条委員会」は、国会の国政調査権に相当する権限を地方議会に付与するもので、この委員会での証言拒否、証拠提出拒否、偽証は告発の対象となりうる。猪瀬元知事が、徳州会からの5000万円について調査する百条委員会が都議会に設置された途端、知事を辞職したのも、百条委員会での偽証などによって告発されることを怖れたからだ。

猪瀬知事と違って、仲井眞知事は今のところ「自信を持って」証言しているようにみえる。保守系議員にも「反仲井眞」を唱える議員がいるのだから、仲井眞知事は窮地に追いこまれる可能性もあるはずだが、自らの決定の正統性を淡々と主張して、怯む様子はない。

なぜか。実は、昨年12月まで沖縄県議会には別の百条委員会が存在した。那覇市の識名トンネルの建設(施行:大成建設)をめぐって県が架空工事をでっち上げ、国の補助金を詐取した事件について調査する百条委員会である。詐取総額は5億円に上るから、誰かが起訴されて裁判になれば、実刑は免れない大規模な詐取事件である。百条委員会では、知事、副知事、幹部職員が厳しく追及され、幹部を含む12人の県職員が書類送検(補助金適正化法違反、虚偽公文書作成・同行使)されたが、昨年12月に出されたトンネル問題に関する百条委員会報告書では、書面に並んでいることばの厳しさとうらはらに、関係した管理職や職員に対して5億円の利息分である7千万円の補填は求めないという結論が下された。書類送検された職員も今のところ起訴されていないから、いってみれば玉虫色の決着に終わったということだ。

仲井眞知事の念頭にこの百条委員会があることは想像に難くない。おそらくなんらかの政治決着が図られる、とぼくは推測している。これもまた玉虫色に終わるということだ。佐藤優さんは「辺野古移設をめぐって 沖縄の保守は二分した」と主張し、沖縄のマスコミも同様の趣旨の報道を展開しているが、もし埋立承認に関するこの百条委員会が玉虫色で決着するようなら、 保守は二分していないことになる。そうなれば、稲嶺名護市長の反対姿勢にもかかわらず、辺野古移設は粛々と進められ、稲嶺市長は半ば切り捨てられるだろう。

「沖縄の世論」が移設反対なのに、なぜ辺野古移設が沖縄の政治的リーダーに受けいれられてしまうのか。そのことを本土のマスコミも、移設反対派のリーダーたちももっと深刻に考えるべきだ。「安倍政権の強圧」に知事が屈服した、という批判が多いが、ほんとうにそんな単純な事態だと思っているのか。安倍政権や万一窮地に追いこまれれば「辞任」して決着をつけられる老獪な知事個人を批判するだけでは埒は明かない。

問題の根っ子を「辺野古への移設強行」に求める限り、同じ事態が延々と繰り返される。ぼくはそう思う。

琉球新報(2014年2月21日)

琉球新報(2014年2月21日)

批評.COM  篠原章
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