武蔵野市議会の「辺野古移設反対」と豊島区議会の「辺野古移設推進」

東京都武蔵野市議会が「辺野古反対」を趣旨として意見書「地方自治の尊重を政府に求める意見書」を可決したことは、メディアでも報道されています。武蔵野市議会:「地方自治の尊重を政府に求める意見書

他方、メディアではまったく注目されていませんが、東京都豊島区議会は「辺野古移設推進」の意見書を可決しました。
豊島区議会:「米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を進めるとともに、正確な情報発信を丁寧に行うことを求める意見書

地方自治体が他の地方自治体で起こっている問題について「意見書」を可決することについては、やはり違和感がつきまといます。法的根拠となるのは、地方自治法99条「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる」ですが、辺野古移設が「当該普通地方公共団体の公益に関する事件」であるかどうか疑問に思えます。

とはいえ、二つの意見書を見比べると、その見解としての違いには大いに興味をそそられました。

武蔵野市議会
「日本全土の 0.6%の面積しかない沖縄に、在日米軍の専用施設の 74%が集中しています。先日も起きた米軍機の墜落や繰り返し発生する米兵の女性に対する暴行事件など、沖縄県民はこの米軍基地に苦しめられ続けています。(中略)普天間基地も、もともと沖縄県民の土地を一方的に取り上げて作られたものです。それを返還するからと言って、どうして、ジュゴンやアオサンゴ、260 種以上の絶滅危惧種を含む多様な海洋生物が生息する辺野古・大浦湾を埋め立て、環境を無残にも破壊して、辺野古に新基地を建設しなければならないのでしょう」

豊島区議会
「これまでの日米政府間の交渉では、沖縄の負担軽減について何度も議題となり、(中略)沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊の要員8,000人とその家族約9,000人が沖縄からグアムに移転すること。この移転および、その結果として生じる嘉手納以南の土地の返還については、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことも、平成24年4月の日米安全保障協議委員会共同発表で決定しています。現在検討に入っている全ての返還が実現すれば、沖縄本島中南部の人口密集地に所在する米軍基地の約7割が返還されることとなります」

武蔵野市議会が、辺野古移設のネガティブな効果を強調するのに対して、豊島区議会は普天間基地返還のポジティブな効果を強調しています。

どちらに主張としての「分」があるかの判断は、立場によって違うでしょう。が、「主張の合理性」という観点から見れば、豊島区議会の作成した意見書に軍配が挙がります。これまで推進派の作成してきた文書の中ではもっとも簡潔かつ秀逸だと思います。

なお、武蔵野市議会の意見書については、我那覇真子氏を代表とする324名から〈地方自治の尊重を政府に求める意見書」の撤回要請に関する請願〉(11月26日付)が出されましたが、市議会はこれを不採択としています。

【追加情報】
鎌倉市議会も、平成27年度12月定例会で「辺野古新基地建設を巡り、地方自治を尊重し、沖縄県と対話での解決を求める意見書を政府に提出することを求める陳情」を議員配布としています。意見書として可決するのは望ましくないと議院運営委員会が判断し、議員に配布する陳情書に留まったようです。

沖縄県庁

沖縄県庁

批評.COM  篠原章
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