ライブ・レビュー:ロバート・グラスパー@ビルボード東京(4月16日)

ロバート・グラスパー(Robert Glapser)の来日公演を聴いた(@Billboard Tokyo 1st.stage on Apl.16 )。

グラスパーの名を知ったのは2013年のこと。レデシーミシェル・ンデゲオチェロなどぼくのお気に入りアーティストをフィーチャーしたアルバム『Black Radio』がグラミー賞ベストR&B賞を受賞したとき。初来日は2019年のことだったと思うが、生音で聴くチャンスはなかった。個人的には、ハービー・ハンコック以来の大物キーボーディスト(ピアニスト)という印象を持った。

今回は3月の鈴木茂のライヴで知り合った上念司さんからお誘いがあり、ビルボード東京のかぶりつきに近いシートに陣取り、グラスパーの大ファンだという上念さんの解説付きで聴くことができた。上念さんは、グラスパーが来日するたびに彼の公演を(複数回にわたり!)聴いてきたという。

予習を重ねてからライブに臨んだものの、どの曲もライブ用にリアレンジされており、どれがどの曲かわからないままただただそのサウンドとグルーブに耽溺。

セッションは、ロバート・グラスパー (Keyboards)、バーニス・トラヴィスⅡ (Bass〈6弦〉)、ジャスティン・タイソン (Drums)、ジャヒ・サンダンス(DJ)という編成。ここ数年のライブはこの陣容でほぼ固定されているらしい。バーニスとタイソンは相当な強者で、ジャヒのパフォーマンスも超一流と見た。

まず驚いたのは、シンコペーションの多用、隠し味としての変拍子の多用というテクニック。「フォービートのジャズ」という土台に隠されたこのような作編曲・演奏の技法は、なかなかお目にかかれるものではない。ロック畑のアーティストのパフォーマンスなかにも、こうした技法を隠し味としているケースもあるが、それこそモーツアルトのピアノ協奏曲第20番台一楽章のごとく自然な流れだ。聴き手を彼のグループに誘いこんでもけっしてハラハラさせない、高度なセンスと密度の高い演奏技術に裏づけられている。グラスパーの真骨頂はまさにここにあり。「ジャズ、ゴスペル、ヒップホップ、R&B、オルタナティブ・ロックなど多様なジャンルを昇華したスタイルで各方面から絶大な支持を集め」という謳い文句はけっして誇張ではない。グラスパーは、疑いなく現代最高峰のアーティストのひとりである、と強く思い知らされた一夜だった。

ロバート・グラスパー(ビルボードJAPAN公式サイトより)

批評.COM  篠原章
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