【新刊『はっぴいえんどの原像』番外編 (3) 】サエキけんぞう×篠原章「ジャックスやはっぴいえんどを支えたのは女子中学生だった!」

『ゆでめん』から53年、はっぴいえんどとは何だったのか?……
『はっぴいえんどの原像』発売記念トークスペシャル

2023年1月20日、リットーミュージックからサエキけんぞう×篠原章『はっぴいえんどの原像』が発売される。

当サイトでは、サエキ・篠原による〝はっぴいえんど〟をめぐる対談を6回にわたって掲載したが(2015年)、その内容は『はっぴいえんどの原像』の土台の一部になっている。そこで、今回この対談を編集したうえ『はっぴいえんどの原像』番外編トークとして分割再掲載する。
番外編(3)は「ジャックスやはっぴいえんどを支えたのは女子中学生だった!」

オールマンブラザーズの話で盛り上がっていると、そこに偶然、サエキにはっぴいえんど「ゆでめん」を貸してくれた女性、清水義光さんが通りかかる。サエキの音楽遍歴とってきわめて重要な先輩である。
※この対談が行われた2015年当時、サエキの事務所は清水さんの仕事場と隣り合わせだった。

清水さんは、ジャックスのファンクラブに入ってた当時女子学院の生徒。ジャックスは、加藤和彦さんのフォーク・クルセダースに<からっぽの世界>と<時計をとめて>という曲をカバーされ、シーンの中核にいた。ファン用に作られたライブ盤(とても音が悪い)と「ゆでめん」をサエキに貸してくれた。その後、『風街ろまん』の頃に、勝手にファンジンなども作っていた。つまり、ジャックスとはっぴいえんどはファンがつながっていたのだ。

サエキ「ジャックスを知った1969年に清水さんは女子学院の何年?」

清水「中3から高1かな?フォーククルセダーズの出るライブに行ってジャックスを見て衝撃を受けて、そしたら小岩の駅前のレコード屋にタクトのシングルが売ってたの(<からっぽの世界>と<マリアンヌ>)」

サエキ「え?それは今では超貴重盤。小岩駅前で買えたの?中学生で『僕、おしになっちゃった~』と歌うジャックスファン?」

清水「ボーカルの早川義夫さんは、確か和光大学の一期生なんですよ。そのお友達の大江長二郎さんが(ファンクラブの)会長をやっていたんです。その下に高校生のお姉さんがいて、後、中学生だったのよ。メンバーが」

サエキ・篠原「えええ!ジャックス・ファンクラブの中心メンバーは中学生?」

清水「会報作ったりしてね。東洋英和のお姉さん(高校生)と、日本女子大附属中学(ポン女中)の女子が3人とか。ほとんど東洋英和とポン女中の3人で作ってた。ガリ版だけどね」

篠原「先日、パリ在住の日本人で、細野さんの立教大学の同級生という方にパリでお世話になりましたが(『はっぴいえんどの原像』に登場する貞廣孝さん)、ジャックスのファンクラブの会員だったんだって」

清水「それは後の方ね、ずいぶん」

サエキ「あの、ちょっと後に作られた、暗いジャケットで音の悪いジャックスのライブレコード(72年)は、68~9年に中学生だった人が中心で作られたの?」

ジャックスのファンクラブが作ったライブ盤(1972年)

清水「あれは、後からどこかのファンが作ったもの」

篠原「その細野さんのお友達は、ファンクラブメンバーとしては遅い方?」

清水「遅い方と思います。最初はとにかくそんな調子だったからね。少したって200人ぐらいはいたかもしれないわね。でも中学生がほとんど!ファンクラブのイベントは、ドリンクがジュースだったからね」

サエキ「人数が増えても、中学生がほとんど???」

篠原「GS評論家の故・黒澤進さんも入ってたはずだよ。」

清水「現、プロデューサーの吉永多賀士(吉永蒔丹)さんもいた。ナイアガラに入る、風都市→ナイアガラ事務所の前島邦昭さんもいたような気がする。」

サエキ「現・ウルトラヴァイブ社長で、『定本ジャックス』『定本はっぴいえんど』などを作った高護さんは熱狂的なジャックスファン。細野さんの同級生も、 高護さんも、みんなジャックスから始まってるんだよね。清水さんははっぴいえんどのファンジン(「風街何とか」というタイトル)とか持ってたし」

篠原「はっぴいえんどの楽譜集『CITY』(1973年)に文章がいくつか載っているんだけど、それにやっぱり中学生か高校生の女の子がいたと思う」

サエキ「ジャックスと、はっぴいえんどの黎明期を支えたファンのメインは女子中学生だったんだ!驚きじゃないですか!だって、フォークゲリラとか、岡林信康さんなどURCの歌手達は、大学生が中心だったわけだったわけですよ。一方で、あのジャックスとはっぴいえんどという鋭い歌詞と音楽の、初期ヘヴィー・ ユーザーが女子中学生だったとは異常な事態といえるじゃないですか!」

清水「最初ミーティングをしたときは早川義夫さんの家だったわ」

サエキ「中学生の会員同士は会わないの?」

清水「会報を作って、郵送で受け取るだけだから、会わないのよ。だからお互いに知らない。積極的な子が会報作りを手伝うから顔合わせる程度。解散後、ジャックスと名のつくファンクラブはあと2コくらいあったかも。でも最初から解散までやってたのは、そのファンクラブ」

サエキ「女子中学生の感性が当時、ジャックス~はっぴいえんどを支えたとは本当に驚きです」

清水「そうかしら・・・」(といいながらと立ち去る)

〈つづく〉

批評.COM  篠原章
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket