やちむん・寿 / りんけんバンドJr. / クラブ・シャングリラ(2)
1999年3月20日(土) やちむんと寿
曇り時々雨は前の日と変わらぬがだんだん寒くなってきた。沖縄らしからぬ肌寒さである。午前中には琉球大などを訪問して県経済の自立などについて面談調査。夕方には北谷に行って、アメリカンビレッジの特設ステージで奈須重樹の“やちむん”をみる。リハーサルと本番の間にりんけんバンドのドラマー・上地一成に会うと“しゃかり”のセカンド・シングルを手渡された。発売1か月で1,500枚というからなかなかの売り上げ。林賢のアジマァ・レコード期待の星である。
やちむんのステージが始まる頃には土砂降りで客もまばらだったが、ぼくのためにアイリッシュっぽい新曲なども含めて熱唱してくれた。マスヨの弾く電気バイオリンがなかなか新鮮。バイオリンはやはり物理的な力も必要だが、マスヨは体格に似合わず(失礼!)か細い不安定な音を出すこともあるので、使いようによっては電気バイオリンのほうがいいと実感。
ステージ終了後、マスヨはバイト先のケーキ屋に向かった が、ぼくと奈須、琉球新報の記者・豊浜さん、それに奈須の一粒種・日向郎(5才)の4人でアメリカン・ビレッジ内にあるロンドンの二階建てバスを廃物利用したパブで食事。優しくて天真爛漫な日向郎との会話を楽しむ。食事が終わってから那覇は小禄(宇栄原)にある奈須の家で再びマスヨと合流、東京から来ている寿のステージを見るべく久茂地へと向かうが、目的のバーがなかなか発見できず久茂地一帯を彷徨ってしまった。
ようやく発見したBAR ZAINで寿に再会。広島出身のウチナー・ボーカリストであるナビィはもともと色気よりも凄みが売り物だが、久々に会ってみると美しく痩せていて魅力増大、なかなかいい感じ。宮城ヨシミツはアコースティック・ギター一本で勝負、延々とセカンド・ラインを刻んでいる。後乗りビートが気持ちいい。眠くなった日向郎を連れて奈須と豊浜さんは 先に帰ってしまうが、ライヴ後、ナビィやマスヨと映画『RING』の話などで大いに盛り上がり時間を忘れる。気がつくと午前3時を回っていて、車を置いたパーキングの営業時間をチェックしてこなかったことを思い出す。念のため確かめに行ってみると、案の定窓口は閉まっていて、こりゃやばいと慌てるが、マス ヨがパーキングのおばあを起こしにいって一件落着。24時間営業だからノックさえしてくれれば起きていきますよとのことだが、さすがに寝間着姿のおばあには申し訳なかった。
ZAINを出てナビィ、ヨシミツ、マスヨとぼくの4人で 開南にある24時間営業の立ち食い沖縄そば屋・丸安へ。最近、下北沢にも出店のある有名店である。最初、栄町市場入り口にある24時間営業の宮古そば屋に行ったのだが、再開発のせいでなくなっていた。だから丸安は今や那覇で唯一まともな立ち食い24時間そば屋となったといえよう。夜明けももう近いのに行列ができるほど盛況。沖縄そば350円はやっぱり納得の安さ。値段を考えれば、ここは沖縄最高の<立ち食い>そば屋である。野菜そば500円は野菜炒めが山盛りだからこれもかなりお得。味はスタンダード。酒飲んだ後には「うまい!」といえるが、昼はまあまあかなと思うようなそば屋である。毎日のように食べる人にとってはリーズナブルな値段と味。そば屋としては75点だが、立ち食いとしては95点だろう。帰投は午前5時。
1999年3月21日(日) 天女のような“りんけんバンド・ジュニア”
午後1時、北谷にある林賢さんのスタジオを訪ね、林賢、 マニピュレーターの山口さん、マネージャの渡辺さんの4人で近くの豚カツ屋で昼食。その後にいったんコザに戻って、林助と本づくりの話。今春からNHK沖縄で「沖縄民話・動物篇」的な番組を担当するというから、来年あたりぼくが出す本でウチナー動物譚といったエッセイでも一本書いてくださいといってお願いするが、話がいろいろ脱線していくうちにエッセイ一本ではもったないという気分になって、じゃあ一冊つくっちまいましょうとうっかり提案してしまった。ぼくが編集者や作家専業であれば林助と何冊でもつくるのだが、大学教師であるというハンディは大きい。でも林助と本を作りたいという気持ちはいつも強いことは確か。こうしてまた悩みが一つ増えた。
夕方、砂辺の浜屋そばへ。中部では有名なそば屋のひとつ。地元のドライブ客(那覇の人など)やダイバーなどに加えて最近では本土の観光客も急増中である。出汁は濃いめの豚骨出汁。化学調味料の有無は微妙。麺は硬めの縮れ麺だが、ほとんどアルデンテで硬すぎる嫌いもある。浜屋そばの小そばならけっこう「うまい」ですむが、ノーマル・サイズの浜屋そばはどんと多めではっきりいって飽きる。ゆしどうふそば、中味そば、てびちそばも名物だが、中味そばがいちばんうまい。てびちは食べるのにひと苦労、指がべたべたに なってしまう。コザ・中の町の揚羽蝶みたいに美味しいテビチだったら許せるんだけど。ぜんざいがあるのがこの店の特徴の一つ。総合点は75点ぐらいかな。
北谷に引き返し、りんけんバンドのマネージャ・渡辺さん の「沖縄移住体験」を取材した後(渡辺さんは伊勢丹の国際部から株式会社アジマァに引き抜かれて沖縄に住み着くことになったステキな女性である)、スタジ オ併設のライヴハウス・カラハーイでりんけんバンド・ジュニアのショーを見る。平均年齢19才の見目麗しい美女3人組(山田梢、崎浜幸代、宮城梓)のパフォーマンス。りんけんバンドのカバーがほとんどだが一部オリジナル曲もある。りんけんバンドのマニピュレーター・山口さんの表現を借りると「まるで竜宮城にいるような」最高の気分。ネーネーズ・ファンには叱られるが、歌にも踊りにも彼女たちを凌駕する洗練がある。身も心もともとろけそうだ。沖縄アクターズ・スクールの“業績”も大したものだが、ポップの未来を感じさせるという点ではりんけんバンドジュニアのほうが上手。ルーツ・ミュージックでこれほどの エンターテインメントを達成できた例をぼくは知らない。沖縄に行ったら必見のショーである。ショーは一晩に4回、チャージは500円で入れ替えなし。飲食代も高くない。りんけんバンド・大川クンの司会もやたらと楽しい(連絡先:098-982-7077 カラハーイ 098-982-7272 アジマァ 月曜定休)。
夢見心地のショーの後は一人那覇に飛んで奈須の家、またまたやちむん・寿と酒盛りである。ポール・サイモンのビデオを眺めながらああでもないこうでもないと盛り上がる。ホテルへ帰ってみれば5時過とという連日の朝帰り。ちょっと自重しなくちゃ学生に示しがつかぬ。
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