そんなに怖くない新型肺炎…重症者数から感染者数を逆算推計してみた(3月5日基準)

 
PCR検査が強化されるため、来週は今まで隠れていた感染者が明るみに出てくるだろうが、実質的には今月中に収束に向かうと見ている。「重症患者の多くが目下入院中」という前提で考えると、感染者数が一時的に増えるとしてもそれほど心配はない。
 

PCR検査強化で感染者数は急増するのか?

来週の感染者数はかなり増えると予測されている。多くのメディアは、感染者数は現在把握されている数とは桁違いのはずだという。予測値は数千人から数万人である。増えることはほぼ間違いないが、メディアの予測をかなり下回るのではないだろうか。なぜなら重症者数が激増するとは考えにくいからである。すでに入院している重症者数から逆算することで、感染者数はある程度把握できるというのが素人なりの判断だ。
 
これまでの情報が正しいとすれば、重症患者は感染者数の2割程度である(中国政府の発表)。現在国内感染者のうちの60人が重症だ(3月5日NHK調べ)。中国の重症化率をそのまま信ずるとすれば感染者数の推計値は300人となる。
 
ところが、現在までの感染者数は1056人である(3月5日NHK調べ)。重症化率を2割とすると感染者は約200人のはずだ。ところが現実には重症者は60人である。重症化率から見る感染者数の推計値200人に対して実際の感染者数は1056人という現実をどう捉えるか、という点が問題提起となる。
 

日本の重症化率は著しく低い

日本の重症化率が中国よりも著しく低いのではないか、というのが考え方のひとつだ。60人(重症者)を1056人(発症者)で割ると日本における重症化率は5・7%だ。新型肺炎は治療法がないなどかなり厄介な病とはいえるが、重症化率5・7%という数値を見るかぎり過剰な心配は不要だと思える。
 
いやそんなことはない。隠れた重症者は多いはずだ。今後の重症化率はやはり中国の2割という数値に近づいていくはずだ、という考え方もあろう。だが、重症化した患者の大半はすでに入院しているはずだ。来週になってPCR検査が拡大しても、重症者が劇的に増えるとは考えられない。
 
来週あらたな重症者が出てくるとすれば、その大半はすでに重症肺炎で入院している患者の中からだ。病因がコロナウイルスかどうか不明のまま重症化してしまった患者である。事後的にコロナと判明するこうした患者の数が数百人・数千人に上ることはないだろう。現在の60人が100人とか150人になることはあっても、500人、1000人になるとはとても思えない。また、現在の軽症者が今後重症化するとしてもその数は劇的には増えないはずだ(ウイルスが変異していれば別かもしれない)。
 

重症化率から逆算した感染者数(クルーズ船を含む数値)

いずれにせよ来週は感染者全体の母数は増える。現在の1056人が3000人ぐらいまで急増する可能性を考えてみよう。感染者数3000人に対して、日本のこれまでの重症化率5・7%を掛け算すると、重症者は170人余りとなる。現段階での重症者数60人の3倍増だ。だが、あらたに発見される重症者が110人もいるとは考えにくい。先にも述べたように一部はすでに入院しているはずだからだ。重症者数から素朴に逆算すれば、3000人もの発症者が存在することはありえないと思う。
 
勝手に予測させて貰えば、来週段階での重症者は100人程度だと考えている。PCR検査の結果感染者数が増えるとしても、重症化率5・7%から逆算すれば、感染者数は1800人程度となる。もちろん急増とはいえるが、おそらく制御可能な患者数である。
 

重症化率から逆算した感染者数(クルーズ船を含まない数値)

ただし、この数値は国内発症者とクルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス)発症者・重症者の合計値である。クルーズ船を除いた国内発症者の数値だけを抜き出してみると重症者は27人だ(NHK調べ)。このクルーズ船を除いた数値のほうがより現実的だと思う。クルーズ船はやはり特殊な環境だったから感染者は相対的に多い。だが、医療体制が整っていたせいか重症者数は相対的に少ない。一般社会では、「具合が悪くても医者にかからない」という人は多いが、医療管理されたクルーズ船ではそうした人はほぼ皆無だった。したがって、重症化を手前で防げた可能性が高いから重症化率が低いのだろう。
 
クルーズ船を除く国内重症者27人を、中国の重症化率2割で逆算すると、27÷0・2=135人となる。これが理屈の上での感染者数だ。実際の感染者数は346人(国内感染)だ。346人に対して重症者27人だから重症化率は27÷346、つまり7・8%となる。それでも中国よりだいぶ低い。
 
重症化率が先に述べた5・7%ではなく7・8%だとして、来週の重症者を今週27人の2倍の54人と想定すると、単純逆算の来週の感染者数は54÷0・78=700人弱となる。5・7%のときよりもさらに減る計算だ。素人計算だがそれほど突飛な数値ではないと思う。
 
こうした計算は仮定の多い単純なものだから、必ず「当たる」というわけではない。現在の感染者増のスピードから見て700人というのは少なすぎるかもしれない。そこで少し多めに見積もったとしても、来週の感染者数は1000人前後ではないかというのが、最終的な予測である。
 
万一来週3000人規模の感染者が出ると、重症化率7・8%の場合重症患者は230人余り、重症化率2割の場合は600人にまで膨らむはずだ。現在の27人のそれぞれ約8・5倍と約22倍である。だが、現状の27人から見ると「8・5倍」「22倍」という数値はかなり非現実的だ。
 
結論的にいえば、PCR検査が強化されても、重症者数100人前後、軽症含めた感染者の合計1000人前後というここでの予測値を大きく越えることはないだろう。
 
今後、ライブハウス、ジム、学校などであらたなクラスターが発生する可能性はあり、十分な警戒は必要だが、上記の推計からこのまま順調に推移すれば、3月中にはピークを越えることができると思う。このまま皆が人出の多い場所への外出を控え、手洗いを励行していれば、深刻で異常な事態は回避できる。我慢のしどころである。
 

怖いのはトランプの決断

いちばん心配なのは、トランプ大統領が急増する日本の数字を見て驚き、「日本人入国禁止」措置を来週にも発令するケースである。そうなると、株も土地も暴落して、政府も企業も大打撃を受ける。倒産と失業は深刻なレベルに達するだろう。GDPの実質低下は避けられず、回復には最低でも1年はかかると思う。米国が過剰反応をしないよう、日本政府とWHOは米国に冷静な判断を下すよう説得する必要がある。
 
もしトランプ大統領が入国禁止措置をとった場合、昨日(3月5日)ここにアップした記事のような喫緊の抜本的対策が求められる。日本にとってそれはかなり重い試練となるが、政策体系の見直しのチャンスと前向きに捉えるほかないだろう。
批評.COM  篠原章
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