与儀公園のチュンジー(琉球将棋)

7月に行われる那覇市市会議員選挙立候補予定者のホームページを見ていたら、同市中心部にある与儀公園が、隣接していた県立図書館の移転のせいで寂れてしまったと書いてあった。

与儀公園の緋寒桜(PHOTO AC より)

遊具やデゴイチが置かれていたり、お花畑や山之口貘の歌碑があったり、ホームレスが住んでいたり(その炊き出しが行われたり)、基地反対の集会で使われたりと、那覇市の中ではかなり重要な公園だと思うが、ぼくにとっては、近隣住民の人たちが青空の下で将棋を指している公園としてとても印象深いところである。

十数年前のある日、与儀公園で将棋を指す一群の人たちを眺めていると、中国ふうの将棋に興じているお年寄りを発見した。まるで香港や台湾の公園でよく見かける光景だ。思わず「シャンチー(中国将棋)ですか?」と訊ねると、「あんたこれ知らんの?チュンジーさー」という返事が返ってきた。

「えっ、チュンジーって?」と戸惑っていると、ぼくの隣で盤面を見ていた人が「琉球将棋のことだよ」と教えてくれた。

調べてみたら漢字では「象棋」と書く。中国将棋の正式表記と同じものだ。象棋を中国ではシャンチーと発音し、沖縄ではチュンジーと発音するらしい。中国語シャンチーとは違うから沖縄風に訛った発音なのか、王朝時代の中国語(福建語)の発音がそのまま残ったものなのかはわからない。

本土には大山康晴が創設したという「日本シャンチー協会」があり、日本棋院のプロ棋士も含めシャンチー愛好者が多数参加している。ホームページを見たら、現在は中国本土というより台湾や香港・マカオとのオンライン交流が盛んらしい。

琉球将棋は中国将棋の一バリエーションで、ルールなどほぼ同じだとのことだが、競技団体・愛好会・大会のようなものはあまりないらしいが、首里に子ども向けのチュンジー教室はあるとのこと。かつては久米村を中心に家庭でも盛んに行われていたというが、日本将棋が移入されてから徐々に廃れていったようだ。一般の人たちには、なかなかお目にかかれない遊戯だが、今でも与儀公園で指している人たちはいるのだろうか。気になるところである。

掲載の写真は朝日新聞の動画から切り取ったりチュンジーの盤面画像と台北の公園に置かれているシャンチー台(PHOTO AC)。

朝日新聞記事より(本文参照)

台北のシャンチーテーブル

批評.COM  篠原章
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