ライブ・レビュー:「鈴木茂☆大滝詠一を唄う Vol.8」@日本橋三井ホール

3月23日(土)は、高校時代の同級生で医療法人社団至高会たかせクリニックの理事長を務める高瀬義昌君の誘いで「鈴木茂☆大滝詠一を唄う」(日本橋三井ホール)を聴いた。

同タイトルのライブは8回目。過去に3回ほど聴いているが、チケットを手配してくれた、熱心な鈴木茂ファンの小原秀之氏(「(株)鳥久」代表取締役)のご尽力でなんと最前列だった。

今回のライブの特徴は、『EACH TIME』発売40周年を記念して、ナイアガラエンタープライズの坂口修氏の協力で、大滝さんのボーカル・トラック(2曲)を使ったパフォーマンスを披露してくれたこと。

加えて、ベース・長岡道夫(ミッチー)、ドラム・上原裕(ユカリ)というナイアガラ時代を代表するリズム・セクションが起用されたこと。

長岡道夫は、ナイアガラ絡みでいえば、「Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語」で切れのいい、ファンキーなプレイを披露する名ベーシストで、『レコード・コレクターズ』の昨年12月号の特集「このベースを聴け!日本編」でも紹介させてもらったことがある。上原裕については、いうまでもないが、「村八分→シュガー・ベイブ」と渡り歩いた70年代日本ロックのレジェンドで、大滝師匠お気に入りのドラマーだった。

おまけに、アコギも3人(鈴木雄大田中拡邦笹倉俊介)、彼らがボーカルも分担した。おかげで、ボーカリストとしての鈴木茂の負担も減って、「ナイアガラ・サウンド・フィーチャーリン鈴木茂」がすばらしい、嬉しいかたちで実現した。

実は、助っ人ボーカル三人の「肉声」を聴くのは初めてだった。大滝師と直接関係を持たないボーカリストが、師の歌唱を意識しながら歌うのもなかなかオツなものだ。ナイアガラと関係の深い、山下達郎、伊藤銀次、佐野元春には大滝師への思いを強く感じるが、師と関係の薄いボーカリストによる歌唱も新鮮だ。「完コピ」を目指さなかったところもいい。

ぼくに年齢の近い鈴木雄大は、70年代ロックを十分知る世代だけあってなんともパワフルでリズミックな歌唱スタイル、田中拡邦は、美声を生かした、大滝さんに近い繊細な歌唱スタイル、旧米軍ジョンソン基地近くで録音された『HOSONO HOUSE』の世界に焦がれて、狭山にあった旧細野邸の近隣に残されていた米軍ハウス(入間市)に移り住んだ笹倉俊介は、アナログ時代への憧れを隠さない歌唱スタイル。三者三様だが、いずれも嫌味も外連味もない、素直なボーカリストで大きな共感を覚えた。次回以降も、ぜひこの面子でやってほしいものだ。

なんとも心地よい、秀逸なライブだったと思う。

終演後、高瀬君、小原氏の身内が集まった打ち上げに行くと、YMO『ソリッド・ステイト・サヴァイバー』が生まれて初めて買ったアルバムだという経済評論家(投資アドバイザー)の上念司氏に遭遇、深夜までYMO話で盛り上がった。

批評.COM  篠原章
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