香港の憂鬱 (1)

glooming days in Hong Kong (1)

80年代まで格安航空券は香港発券が当たり前だったから、まず香港までの片道切符を取得し、香港に数日滞在して、次の目的地までのチケットを探した。アジア周遊券やRTW(世界一周航空券)を買うことも多く、最終段階のストップオーバーに東京を含めた旅程を組んで東京に帰り、数か月後(有効期間内)に出発地・香港に戻って、そこでまた航空券を取得する、といった旅を繰り返していた。おかげで香港はいちばん馴染みの深い海外の一つになり、今も年1回は香港に旅している。

だが、ここ数年の香港は大きく様変わりしている。英国から返還された時でさえ、これほど大きく変わらなかった。返還直後に目立ったのは真新しい中国語の看 板とわずかながらの人民解放軍だけだったが、中国本土の急速な経済発展に伴い、想像を絶する人数の中国人旅客が雪崩れこんでいる。尖沙咀(チムシャツイ)や中環(セントラル)などの中心部には、中国から直接やってきた旅客を乗せた観光バスが数珠つなぎになり、ショッピングモールや中堅どころのレストランも彼らで溢れかえっている。

香港政府観光局によれば、観光客総数5,430万人に対して中国本土からの観光客は4,075万人(シェア75%)。実に観光客の4人に3人が中国からである(因みに香港の人口は716万人)。彼らは巨大なショッピングバッグを抱えて団体で行動するから、他の国からの観光客の居場所がないほど。多くは観光バスでやってきて、その一部はバスで寝泊まりする。深夜まであちこちで大騒ぎしているから、ホテルによっては賑やかで寝られないほど。あちこちでツバを吐き、ゴミを置き去りにし、ところ構わず座り込んで、大声で話しながら土産物を仕分けするといったマナー違反も目立つ。

(続)

香港の憂鬱 (2)につづく)

※ 写真は時事通信社。中国人観光客の増加に抗議して、紅衛兵のコスチュームに身を固め「中国人は中国から出るな」を訴えるデモ隊

※ 写真は時事通信社。中国人観光客の増加に抗議して、紅衛兵のコスチュームに身を固め「中国人は中国から出るな」を訴えるデモ隊

批評.COM  篠原章
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