【新刊『はっぴいえんどの原像』番外編 (8) 】サエキけんぞう×篠原章「米英の呪縛からの解放」

『ゆでめん』から53年、はっぴいえんどとは何だったのか?……
『はっぴいえんどの原像』発売記念トークスペシャル

2023年1月20日、リットーミュージックからサエキけんぞう×篠原章『はっぴいえんどの原像』が発売される。

当サイトでは、サエキ・篠原による〝はっぴいえんど〟をめぐる対談を6回にわたって掲載したが(2015年)、その内容は『はっぴいえんどの原像』の土台の一部になっている。そこで、今回この対談を編集したうえ『はっぴいえんどの原像』番外編として分割再掲載する。
番外編(8)は「米英の呪縛からの解放」

「ブリティッシュVSウェストコースト」「米VS英」という呪縛

サエキ鈴木茂さんは3枚目『HAPPY END」録音時にローウェル・ジョージと会うまで、リトル・フィートを知らなかったという説もあるけど、同時平行だから、全く気にならない、むしろその後に作られた鈴木茂ソロ『バンド・ワゴン』のほうが、当時のアメリカン・シーンの盤と比べて、フュージョン的な意味も含めて早いかも」

 

篠原「細野晴臣さんも大滝詠一さんも、フィル・スペクターと同じ土俵に入るってつもりでやってきたと思います。ただ、そのことを周りが正しく評価できなくて、バッファローみたいとか、モビー・グレープみたいとか、CSN&Yみたいとか、“みたい”で括ってしまった。彼らは日本のロックを創りたかったんじゃなくて、英米と同じレベルで音楽をやりたかったんです」

サエキ「バッファローやモビーグレープという記号を防波堤のように使ってたけど、引用した音楽の中にはシカゴとかデッドの要素も入ってた。しかし、当時のロックの泥臭い状況の中では、防波堤がないと、カテゴライズされる危険に常にさらされてましたからね」

篠原「そうそう。真似とかなんとか言うレベルを超えてたんだけど、ブリティッシュVSウェストコーストといった二分法まででてきちゃった。たとえば、モビー・ グレープの『WOW』(写真3)収録の<he>という曲のイントロは<夏なんです>とそっくりなんだけど、模倣と言うには余りにも部分的だし」

サエキ米VS英みたいな呪縛も凄かった。聴いてる我々は、バッファローやモビーよりもはっぴいえんどの方がずっと好きだった」

篠原「その通りですよね」

〈つづく〉

批評.COM  篠原章
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