沖縄のちょっと怖い話(笑)VOL.1

8か月ぶりに沖縄を訪れた。普天間基地ゲート前には、オスプレイ反対運動の方々が垂れ幕を掲げて、道行く人たちにアピールしていた。大半の方たちは退職した公務員や教員の方たちだった。日焼けして、いかにも健康そうだった。善意に基づく運動だが、土日は休むというから、まさに「お仕事」である。年金をもらい(夫婦で教員だった世帯には月50万以上の年金が入るという)、暮らしには困らない人たちだ。

沖縄の基地反対運動のリーダーの一人、高里すずよさんが、「逮捕されても困らない高齢者を先頭に立たせる」といっておられたが、十分年金をもらっている方たちなら「逮捕もされても大丈夫」ということなのだろうか。ぼくはちょっと怖くなった。

那覇中心部をぼんやり歩いていたら、上空にオスプレイが見えた。思ったより、しっかり飛んでいた。日米合意に基づいたルートかどうかよくわからないが、いったん飛び立ったオスプレイは、天候や風に対応しながら臨機応変にルートを選ぶのだろうな、と思った。決められたルートを厳格に守ったら危険性が増してしまう。でも、オスプレイ反対運動の人たちが、反対の意思表示のために飛ばしている風船をよけてオスプレイが落ちたらどうしよう、とぼくはちょっと怖くなった。怖くなって写真を撮るのをうっかり忘れてしまった。

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沖縄出身の反対運動家ももちろん頑張っているが、中にはウチナーンチュ2世も多いという。つまり、ヤマトの都会人だ。彼らは悪代官の手先に比べてはるかに洗練されている。辺野古の住民の多くは運動に参加していない。地元出身ではない、帰るところのある人たちが反対運動の先頭に立ち、地元出身・地元在住の、帰るところのない人たちが運動に冷淡という構図だ。そのことを知って、ぼくはちょっと怖くなった。

同作品のパンフレットには、東京大学の高橋哲哉先生の講演記録が収録されていた。ヤマトはウチナーを差別していると繰り返していた。高橋先生は、ウチナーの中での差別には触れていなかった。基地に反対する人たちの声はヤマトまで届くが、基地反対という声を挙げない(挙げられない)人たちの存在はヤマトには知られることはない。それもまた「構造的差別」だと思うのだが、高橋先生のお考えは、ウチナーの中での差別は無視していいといっているに等しかった。ウチナーの中での差別を平気で切り捨てる高橋先生の勇気が、 ぼくには眩しすぎて、ちょっと怖かった。

普天間基地の周囲に住んでいるのにオスプレイが飛行する姿を一度も見たことがない人のほうが多いという話を聞いたが、沖縄の人は皆基地から甚大なる迷惑を受けているというのが、高橋さんの話の前提だ。沖縄では、オスプレイを見たこともない人も、オスプレイから迷惑を受け、傷ついているということになる。そんな超能力を備えたオスプレイが、ぼくはあらためて怖くなった。


那覇市小禄のイオンでトイレを借りた。トイレの個室内に張り紙があった。トイレで「インスリン注射」を打った人は、使い捨て針を捨てずに持ち帰るように、と書いてあった。

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東京では聞いたこともない話だが、ここではトイレでインスリン注射をする人が多いのだろうか。ちょっとあり得ないような話だ。

駐車場で車を探して歩いていたら、見知らぬ人がぼくに向かってジェスチャーしていた。注射を打つマネのジェスチャーだった。「インスリン」を売っている、ということがいいたいらしい。

那覇の小禄のイオンでは「インスリン注射」がちょっとした流行らしい。
ぼくはちょっと怖くなった。

批評.COM  篠原章
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