翁長沖縄県知事の国連スピーチ(全文と訳文)

Mr. Onaga, Governor of Okinawa Condemned Japanese Government at the UNHRC Meeting

沖縄県の翁長雄志知事が、ジュネーヴで行われた国際連合人権理事会(United Nations Human Rights Counci, UNHRC)の第30回定期会合に出席して、政府が進める普天間基地の辺野古移設を進める政府を厳しく非難しました(9月22日)。スピーチは、日本時間0時8分(現地時間21日17時8分)過ぎから約2分間にわたって、日本のNGO「市民外交センター」の時間枠を利用して行われました。

以下、英語スピーチの全文とその訳文を掲ます(参照元はUN WEB TV。聴き取りと翻訳は批評.COMによる)。スピーチに対する篠原の論評については、産経デジタルのオピニオン・サイト「iRONNA」の拙稿『沖縄県民も安保も「人質」、「政略」の臭いさえ漂う翁長氏国連演説』をご覧ください。

【Speech in English】
Thank you, Mr. Chair.
I am Takeshi Onaga, governor of Okinawa Prefecture, Japan.
I would like the world to pay attention to Henoko where Okinawans’ right to self-determination is being neglected.
After World War 2, the U.S. Military took our land by force, and constructed military bases in Okinawa.
We have never provided our land willingly.
Okinawa covers only 0.6% of Japan.
However, 73.8% of U.S exclusive bases in Japan exist in Okinawa.
Over the past seventy years, U.S. bases have caused many incidents, accidents, and environmental problems in Okinawa.
Our right to self-determination and human rights have been neglected.
Can a country share values such as freedom, equality, human rights, and democracy with other nations when that country cannot guarantee those values for its own people?
Now, the Japanese government is about to go ahead with a new base construction at Henoko by reclaiming our beautiful ocean ignoring the people’s will expressed in all Okinawan elections last year.
I am determined to stop the new base construction using every possible and legitimate means.
Thank you very much for this chance to talk here today.
【日本語訳】
議長、ありがとうございます。日本の沖縄県の知事、翁長雄志です。
私は、沖縄の自己決定権がないがしろ(neglect)にされている辺野古の現状を、世界の方々にお伝えするために参りました。
沖縄県内の米軍基地は、第2次大戦後、米軍に強制的に接収され、建設されたものです。私たちが自ら進んで提供した土地は全くありません。
沖縄の面積は日本の国土のわずか0・6%ですが、在日米軍専用施設の73・8%が沖縄に集中しています。戦後70年間、沖縄の米軍基地は、事件、事故、環境問題の温床となってきました。私たちの自己決定権や人権が顧みられることはありませんでした。
自国民の自由、平等、人権、民主主義も保証できない国が、どうして世界の国々とこうした価値観を共有できると言えるのでしょうか。
日本政府は、昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を無視して、今まさに辺野古の美しい海を埋め立て、新基地建設を進めようとしています。
私は、考えられうる限りのあらゆる合法的な手段を使って、辺野古新基地建設を阻止する決意です。
今日はこのようにお話しする場を与えて頂き、まことにありがとうございました。

このスピーチに先立って、市民団体が国連施設内で開催したシンポジウムで約20分間にわたり講演し、沖縄に米軍基地が集中する「理不尽な現状」を強調するとともに、「基地問題の真犯人は誰か謎解きをしてもらいたい」と訴えました。このシンポには、琉球新報の潮平芳和編集局長と沖縄タイムスの阿部岳北部報道部長も参加し、知事同様、政府の姿勢を批判しています。

翁長知事の人権理事会におけるスピーチは、現地時間の22日にも行われる予定でしたが、前日示された日本政府の見解への反論というかたちで、島ぐるみ会議の女性メンバーが代行しました。また、同日計画されていた国連人権理事会の先住民族の権利に関する分科会での講演も中止されました。

知事が予定を変更した理由については、さまざまな憶測を呼んでいます。公式には、人権理事会の待機時間が長かったため予定をこなせなかった説明されていますが、人権理事会が、3名のカウンタースピーチを認めたことが予想外だったため、22日のスピーチ・講演を取りやめたともいわれています。

ほとんど報道されていませんが、知事のスピーチに対するカウンタースピーチは、嘉冶美佐子・ジュネーブ国際機関代表部大使、我那覇真子「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」代表のおふた方によって行われています。プログラムには、石垣市議・砥板芳行氏のスピーチも予定されてましたが、時間的な制約もあり、我那覇氏のスピーチに砥板氏の主張も含められたとのこと。議事録には砥板氏のスピーチ原稿も収められたようです。

 

From Website of UN Geneva Office

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批評.COM  篠原章
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