カレーハウス11イマサは侮れない

イマサ

たとえば、インド料理のスペシャリスト・渡辺玲さんなどには笑われてしまうと思うが、ぼくは立ち食い(と場末スナック廻り)がライフワークなので、立ち食い系カレーもできうるかぎりチェックするよう心がけている。

 ところが、新宿の立ち食い系カレーでは、京王電鉄系<カレーショップC&C>本店(京王線新宿駅隣接)の王座は揺らぐまいと信じて、長いこと他のお店のチェックをすっかり怠っていたのだ。

 やはり怠慢は罪だった。 神様ごめんなさい、I’m sorry,Excusez-moi,Entschuldigen,予想外の事態に直面してしまったのである。新宿西口京王モールにある<カレーハウス・ イマサ>(正確にはカレーハウス11イマサ)が驚くべき進化を遂げていたのだ。

 イマサといえば、創業48年のスタンドカレー老舗 (椅子はある)。老舗は死店だなんて喩えもあるほど、この立ち食いの世界では生き残るのは難しい。よほど個性的であるか値段が安くない限り、商売を続ける ことは不可能な時代だ。駅近という条件だけで命を繋いでいる店もあるが、もはや命運は尽きかけている。

 それが証拠に都区内主要駅または駅近辺にあった、歴史あるインディーズ立ち食い店はほぼ壊滅状態。多くは大手外食企業や立ち食いチェーン店にとって代わられ、立ち食い店にツキモノの闇市っぽさなど今や望むべくもない。

 イマサも老舗の不幸を背負って潰えていくものと思っ ていた。新宿西口ションベン横丁(思い出横丁)角にあった本店も、池袋サンシャイン通りにあった親会社(親店か…)の居酒屋・木曽路も数年前に消えていた から、残された京王モール内の店舗もそう長くはもたないだろう観測していた。

 ところがドッコイ、である。イマサはどうやら経営資源を一店集中して生き残りをかけた闘いに挑んでいるのである。

 何よりも価格だ。C&Cの定番最低価格がポークカレーの400円(タイムセール商品などを除く)。これに対してイマサのポークカレーは390円。以前はイマサのほうが高かったのだか、いつのまにか逆転していたのである。

 さらにメニューの多様化にも目を見張る。ルゥは、 ビーフカレー系、チキンカレー系、ポークカレー系、印度カレー系の四種類。トッピングのカツもロース、チキン、ハム、メンチの四種類。ほかにハンバーグ、 玉子のコロッケ、トロあじフライ、二度揚げ排骨なんてものもある。肉類の増量も可能だ。サイドメニューのサラダも四種類。ちょっとメニューが多すぎるきら いもあるが、「やる気」は大いに感じられる。

 で、ぼくは数あるメニューのなかからB級感のとくに 強いハムカツカレー450円也を注文。厚切りの幅15ミリ程度のカツが3切れ。ルゥはたぶんポークカレー系だが、辛さもほどほどコクもある。辛さでは C&Cだが、コクではイマサ。強いていえば薬味のラッキョウがないのがイマサの弱点か。ラッキョウの代わりにきゅうりのキューちゃん(東海漬物)風の漬物 が置いてある。福神漬はイマサが酒悦系、C&Cは真っ赤な着色系。これは好きずきだろう。

 新宿駅西口方面に御用のある向きはぜひ一度お試しあれ。

 デフレと激しい競争のおかげで立ち食い食、B級食の進化も侮れないものとなっている。心して臨まなければ。

参考 カレーハウス11イマサ=(株)今佐 HP

   カレーショップC&C=(株)レストラン京王 HP

批評.COM  篠原章
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