ドラマ・レヴュー:『ふたりのウルトラマン』(中江裕司/脚本・演出)

NHK『ふたりのウルトラマン』(中江裕司演出・脚本)を3度目のオンエアにして初めて見ることができた。

円谷特技プロダクションで、『ウルトラマン』の脚本を担当した2人のウチナーンチュ、金城哲夫と上原正三のドキュメンタリー風物語である。

奇才・金城哲夫についてはこれまでも繰り返し取り上げられてきたが、『ふたりのウルトラマン』は、上原正三によるひとり語りという体裁をとる。円谷英二、円谷一、実相寺昭雄などが金城、上原に絡み、全盛期の円谷プロの生き生きした様子が描かれる。

芝居の合間に、円谷プロのホンモノのOB(満田かずほ、円谷粲など)、金城夫人や実妹が登場して、この作品がドキュメンタリーであることを想いださせてくれるが、基本的には中江裕司の「ニライカナイと(ウルトラマンの)光の国のイメージを大きく重ねながら、表現者としての限界に直面して沖縄の地で散る」という金城哲夫観がベースとなったノンフィクション的フィクションである。

NHKのPRサイトより

金城哲夫の満島真之介、円谷一の青木崇高、上原正三の佐久本宝(晩年の上原は平田満)の好演が光るが、哲夫の妻・金城裕子を演ずる蔵下穂波も「いい役者に成長したな」と思わせる。蔵下のデビュー作(子役)は同じ中江裕司の『ホテル・ハイビスカス』(2002年)だったが、あれから20年も経ったのか。満島、佐久本の台詞のなかに時折混ぜられるウチナーグチも自然で好感が持てたが、これは沖縄言葉指導を担当した津波信一のセンスなのだろうか。

劇中、海洋博(1975年)のセレモニー(金城哲夫演出)の資料映像が出てくるが、不思議な印象が残った。この種のエンターテインメントも含めて、海洋博は、復帰から半世紀を経た今、あらためて評価し直す価値(プラスもマイナスも)があると思った。

ドキュメンタリーとしては食い足りない部分もあるが、『パイナップルツアーズ』から一貫して「沖縄の明暗」を描き分けようと奮闘してきた中江裕司の金城哲夫に対する「愛」に満ち溢れた作品だ。

なお、『ふたりのウルトラマン』は、NHK+(プラス)にて6月26日 午前1:54 まで見ることができる。


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批評.COM  篠原章
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