3月23日、翁長沖縄県知事が臨時の記者会見を開き、「岩礁破砕」を理由として、辺野古沖で進められている沖縄防衛局によるボーリング調査の許可を取り消す「決意」を示した。
以下に掲げる会見全文を読んでもらえばわかるが、これが直ちに辺野古埋立の許可取消につながるものではないし、行政の手続き論から言えば、かなり無理のあるアプローチだ。
同日付の産経新聞がスクープしたように(沖縄知事、辺野古海底作業停止を指示(3月23日付))、防衛省は事前に(昨年8月の段階で)、埋立予定区域外の「岩礁破砕」に関する協議のための資料を提出していたが、沖縄県は「岩礁破砕に関する協議は不要」とし、資料そのものを許可申請書から削除させたという。
ところが、翁長知事は、今になって岩礁破砕は許せないといいだした。協議そのものを不要とした県当局が180度態度を転換したことになる。(仲井眞氏から翁長氏へと)首長が変われば、行政の一貫性が損なわれて良いということであれば、法治もクソもあったものではない。
国や防衛省が強気なのは、沖縄県側の、こうしたご都合主義的な対応があるからだ。裁判になっても、翁長知事側の主張が通る可能性は少ない。翁長知事側の一連の言動が、このことを承知したものであるとすれば、悪質な時間稼ぎということになるだろう。
それにしても、これほど多くの記者が翁長知事の真意を疑う質問を繰り返す記者会見は観たこともなかった。肝心な質問の一部を安慶田副知事や事務方に答えさせるなど、知事の無責任な対応にも疑問符がつく。
とくに「知事の重大な決意とは?」というRBCの記者の質問に対して、「集会で<知事の重大な決意>と発言したのは副知事だから、副知事から答えさせる」と応じたのには呆れた。
たとえ承認を取り消したとしても、国と裁判で争うことになり、だらだらぐだぐだがつづく。そうこうしているうちに辺野古の作業は確実に進む。何の実もない知事の措置に、辺野古の現場で闘う人々がどうして「喜ぶ」のか不思議だ。そんな現状認識で闘うのはバカげている。
翁長知事は、結果として国に埋立を続行させ、「私たちの反対にもかかわらず国は埋立を強行した。今となってはその補償を求める以外に手立てはない」と言いだすだろう。二重三重の補償を求めようという魂胆だ。こういうのを泥棒に追い銭という。ふざけている。納税者は怒るべきだ。
【翁長沖縄県知事臨時記者会見 2015年3月23日(全文書き起こし)】
※ 批評.COMによる聴き取り。文中敬称略。ソースは沖縄タイムスの発信する動画。万一、誤りがあれば遠慮なくご指摘ください。県庁職員や記者の氏名についてはフルネームがわからない場合もありますが、何卒ご了承ください。
司会
はいさい、それでは臨時の記者会見を行います。
翁長知事
はいさい、ぐすーよーちゅーがなびら。臨時記者会見をご案内しましたところ、ご参加を頂きましてありがとうございます。
今日は辺野古制限区域内での調査指示に関することでですね、ご報告をしたいと思います。
本日3月23日、沖縄防衛局に対し、辺野古の臨時制限区域内において、知事の許可を得ずに、岩礁破砕がなされた蓋然性が高いと思慮されることから、県が必要とする調査を実施することとし、県の調査終了後改めて指示するまでの間、当該許可区域内を含め当該工事にかかる海底面の現状を変更する行為のすべてを停止するよう指示をしました。
在日合衆国軍隊の運用上の理由で、県の立ち入り申請を受け入れることができないということについては、臨時制限区域内に民間工事船や海上保安庁の船艇が多数出入りしており、また沖縄防衛局は自ら潜水調査を実施していることから、県の調査船の立ち入りが運用上の問題があるとは理由にならず、特に平成26年6月20日に普天間飛行場代替施設の建設にかかる立ち入り制限が課される前までは自由に航行できた水域について、県の公務遂行の調査さえできないということは不合理極まりない。
県としては漁業調整規則違反の懸念が払しょくできない状態であることから、今回の指示を発することとなりました。沖縄防衛局には、この指示を真摯にとらえ円滑な調査が行われるよう知事から許可を受けた者として、また臨時制限区域の共同使用を行う者として責任ある対応を求める、ということでございます。
いちおう私の方からはコメントとして以上でありますけれども、ご質問等ありましたらよろしくお願いいたします。
司会
それでは質疑に入ります。まず県内幹事社からお願いします。
県内幹事社・沖縄タイムス・吉田央
さきほど報道陣に配って頂いた資料に、この指示に従わない場合は許可を取り消す事があるという文言があるんですが、今回の指示を出されたあとに局側が指示に従うかどうかを見極める期間というのをどれくらい想定していらっしゃいますでしょうか。
翁長知事
これは皆様がたのお手元にですね、防衛局宛に出しました指示の文書があると思いますが、本書受領後7日以内ということになっております。
沖縄タイムス・吉田
もう一問お願いします。今回の指示の根拠が岩礁が破砕されている蓋然性が高いということが理由のひとつだと思ってます。仮に岩礁が破砕されているとすれば、その岩礁の原状回復を求めるお考えもありますでしょうか。
翁長知事
制限区域外のところで、私ども調査をさせて頂きました。そしてその中で、中においても調査をしようとしましたところ、米軍の方で許可が得られなかったということになります。今回調査をして、そういった岩礁破砕が見られる場合には、これはその状況等々しっかりと見極める必要がありますけれども、これは原状回復を含め、いろんなやり方があるかと思いますので、この辺は事務方の方に状況の確認等あるいはまたやりかたについて説明を、補足をお願いしたいと思います。
水産課(かりゆしウエアのおじさん)
今のところを補足させて頂きます。原状回復ということでございますが、今回調査は制限水域の外側だけ今やってるところです。制限区域の内側も調査した上でその状況において判断することになろうかというように考えてます。以上です。
県外幹事社・日本経済新聞・藤田祐樹
元々岩礁破砕許可について沖縄防衛局と県の見解というのは違っているかと思うんですけれども、沖縄防衛局は今回の指示を受けても、それにもかかわらず作業を進めた場合に、県としては対抗手段はどういうことを考えてますか。
翁長知事
これは想定されるいろんなあり方があると思いますけれども、それをひとつひとつ踏まえて対応を考えて行きたいと思っておりますが、私たちからしますと今回の防衛局のコンクリートブロックの投下というものは、岩礁破砕の状況がたいへん蓋然性が高いということで規則を含め法律的にも大変厳しいものがあろうかと思っています。これについて、説明…
農水部長・山城毅
今回、県の方から二度目の調査依頼の通知を今日また出しておりますので、国、防衛局としては真摯に預け入れてくれるのではないかな、というふうに期待しているところでございます。
日本経済新聞・藤田
もう一点すみません、今ですね、先週会見されたときに、外務省に立ち入りの許可、外務省を通じて米軍にお願いしてるといってたと思うんですが、現状その回答というのは返ってきてるんでしょうか。
翁長知事
まだですね。
日本経済新聞・藤田
実際にその調査をするのは、回答が返ってきてからになるんですか?
翁長知事
いや、これは今改めて防衛局の方に今日出しているものがありますね。(職員を向いて)これを読みあげて説明してくれますか。
水産課・かりゆしウエアおじさん
みなさんのお手元にも配られてると思いますが、今日付けで沖縄の防衛局宛にキャンプシュワブ臨時制限区域の立ち入り許可申請について、ということで通知を出しております。内容につきましては、二段落目からですね、去る2月26日、在日合衆国軍隊に対し、当該調査のため立ち入り申請を行ったが、運用上の理由で県の立ち入りを受けることができないという回答でありました。しかしながら、臨時制限区域内に民間工事船や海上保安庁の船艇が多数出入りしており、また沖縄防衛局は自ら潜水調査を実施していることから、県の調査船の立ち入りが運用上の問題があるとは理由にならず……、ということで不合理極まりないものであるということで、再度、臨時制限区域の共同使用を行うものとして責任ある対応を求める、ということで本日通知してるものであります。
朝日新聞・山岸一生
岩礁破砕許可の取消に関して端的にお聞きしたいんですけれど。今回の指示に従わなかった、つまり7日以内に従わなかった場合には取り消すことがあるとしていますが、取消をされるんでしょうか。
翁長知事
(安慶田副知事と相談後) 沖縄県指令農第1381号、いわゆる沖縄県漁業規則の第39条第3項の規定により、次のとおり条件を付して許可します、という中にですね、
「第6号、漁業調整その他公益上の自由等により別途指示をする場合はその指示に従う事」
また9の方にですね、
「本申請外の行為をし、また付した条件に違反した場合は、許可を取り消すことが出来る」
ということで、この条件を付して許可をしておりますので、そういうことはあり得ると思います。
(参考 批評.COM)
沖縄県漁業規則第39条 漁業権の設定されている漁場内において岩礁を破砕し、又は土砂若しくは岩石を採取しようとする者は、知事の許可を受けなければならない。
2 前項の規定により許可を受けようとする者は、第9号様式による申請書に、当該漁場に係る漁業権を有する者の同意書を添え、知事に提出しなければならない。
3 知事は、第1項の規定により許可するに当たり、制限又は条件をつけることがある。
朝日新聞・山岸
2 番目としまして、今回一連の問題の中で指示は2回目だと思うのですけれども、1回目の指示でも同じ「取り消すことがある」という表現でした。で、今回も同 じ言葉をつかっていらっしゃるわけですけれども、これは同じ言葉であってもニュアンスはかなり強まっていると、状況はかなり変わってきているというそういう理解でよろしいでしょうか。
翁長知事
そうですね、前のものは、今急な質問なので正確かどうかアレですけれども…
(知事の手元に前回提出した書面が渡される)
所謂そういったことがある場合には「可能性がある」といたしました。そしてこういったこと等をやる場合において、「3日以内に海底面の現状に変更を加えない事」とやりましたら、これはもう既に終わってたという状況もございます。今回もそういったものの中で調査をして、そして今度蓋然性が高いという事になりますと、この取り消しについては前よりは大変重いものになるのではないのかな、というふうに思っております。
NHK・黒川明紘
今の質問と同じようなもので恐縮なんですけども、本書受領後7日以内にすべての作業をやめる、で、これに従わない場合は許可を取り消すことがあるというのは、もう速やかに7日移行指示に従わなかった場合は、取り消すという理解でよろしいのでしょうか。
(知事が副知事、水産課と相談する声が入る)
<7日以内に報告によって、この報告によって検討するわけでしょ>
<報告によってね>
<報告を見てから検討するんでしょ?>
(マイクは水産課・かりゆしウェアのおじさんへ)
水産課かりゆしウエアおじさん
はい、水産課で補足いたします。あの、「取り消すことがある」という表現ですが、「取り消す場合がある」というように、即その時点で取消という判断が出るのではなくて、その時点で(判断が)下されるということでございます。
NHK・黒川
知事にお伺いしたいんですけど、知事としては「腹は決めている」という感じでしょうか。
翁長知事
はい、ま、腹は決めておりますね。今、この問題に関していろいろな角度から検討してまいりますけれど、そういう事態になった場合には、それは私とすれば粛々とさせていただきたいと思っていますが、ただ、今、形態がね今まだはっきりしないものですから、これをどの場合でもどうするんだということにはなりません けれども、私としてはそれはしっかりと対応していきたいというふうに思っています。
毎日新聞・佐藤敬一
1点お願いします。仮にの話で恐縮なんですけれども、岩礁破砕許可を取り消した場合に県の方としてはもうボーリング調査ができない、という説明をしてるかと思うんですけど、それでも国の方がボーリング調査を続行するような場合に、法廷闘争、裁判までも起こすことも考えているんでしょうか?
翁長知事
これは、あなたが今恐縮したようにですね、やっぱり仮説、仮定の問題に答えると、なかなかこういう問題デリケートでありますので、そういうこともしっかりとまた念頭に入れながらしっかり対応していきたいと思っています。
共同通信・福田
今「腹を決めている」とおっしゃったんですが、そのあとに「形態がはっきりしないので」とおっしゃったのですが、その「形態がはっきりしない」とはどういうことでしょうか。
翁長知事
今調査をして、その状況、岩礁破壊の状況、これもいろいろあろうかと思います。そういったことが現に出てきて、そういったことを踏まえて判断をするわけですから、まだ見えてこないもんですから、しかしながら私とすれば私なりの判断で見えてくるものがあったら、腹が決まってるということを申し上げてるわけです。
琉球新報・新垣
県が岩礁破砕の許可の取消などを検討しているということに対して、政府の方は残念だというような反応で応じる気配がまったくないんですけど、こういうことに対して今後どのように?
翁長知事
政府の方は一貫として沖縄県民にご理解を求めながら粛々ということでございます。しかしながら今回の私どもの調査という意味で、日米地位協定の共同使用の中で立ち入りが出来なかったということ等を考えて、あるいはまた今工事船あるいは海上保安庁の船がそこを行き来している中でも、県の調査というものについて理解がない。また防衛局も自身で調査もしているということを話もされてましたので、これは大変理不尽だと思っております。ですからこういったことを踏まえると、政府のおっしゃるような形で県民な理解を得ながらということについては大変不十分ではないかと思っていますので、私どもはそれを踏まえて、どういう対応されるかわかりませんけれども、私たちもしっかりと対応していきたいと思っています。
NHK・島田有希子
関連しますけれども、官房長官が今日の午前中の記者会見で、「沖縄県側とは調整したうえで許可をうけている」と。「作業についても今後も粛々と進めていく」という考えを既に示されていますけれども、こういった政府側の対応について、知事はどのようにお考えですか?
翁長知事
取扱い方針が、「船舶の投錨を例外」と定めているのは、船舶の投錨行為が漁業活動を行うに当たって重要な行為であって、かつその行為形態は類型的に軽微なも のだからである、と私たちは認識をしております。同じようなことになりますが、船舶の投錨が取扱い方針上例外とされるのは、それが漁業活動に付随的な行為 であり、かつ類型的に水産資源へ影響が軽微であるからという理由に基づくところでありまして、本件コンクリート構造物の投下は漁業活動に関する一般的、類 型的な行為でもなく、また類型的に岩礁破砕にあたらない軽微なものとして取扱い方針が想定しているものだとは到底考えることはできない、と思っております。
したがって本件コンクリート構造物がフロートのアンカーであるから許可が不要であるという論理はまったく成り立たないわけでありまして、結局本件コンクリー ト構造物の投下が岩礁の破砕と言い得る程度のものであれば、当然岩礁破砕許可を要する行為だと思っています。その意味で官房長官が私どもと協議をしたことについての認識の違いがそこにあるのではないかと思っています。
沖縄タイムス・・・
受領後7日以内にということなんですが、今外務省を通じて米軍に出している許可申請ですが、あれは14日前までに出すということになっていると思うんですが、7日以内までに工事を止めた場合にその場から調査をするように防衛局に調整してほしいというような思いも入ってるんですか
翁長知事
その通りです。
沖縄タイムス・・・
14日前というのを待たずに、もう工事を止めた時から調査に入りたいという県側の思いがあるんですか?
農水部長・山城
3月16日に米軍に出した申請の内容が、「2015年3月19日以降なるべく早い日で3日間」という依頼をしています。
ですので、向こうから了解の回答が来ましたら、速やかに我々としては調査に入りたい、ということでございます。
RBC・嘉手納
おととい土曜日に瀬嵩の集会で、安慶田副知事が「知事が近く最大の決断する時期」とおっしゃったんですけれども、今回の指示が最大の決断になるのか、それとも7日間以降国の回答を待って、それから下す決断が最大のものなのか、知事のお考えを聞かせてください。
翁長知事
今日までいろいろ議論をしてきておりまして、そういったこと等で安慶田副知事がむこうで話をされておりますので、本人から聞いた方が良いと思いますね。
安慶田副知事
私が最大の決断をするといったのは、今日のことも含めて、これから行われてくることに対して、さきほどからお伝えしておりますように、指示というのが2回目でございますのでので、知事も腹を決めているとのことですから、そういう意味も含めて私は発言したつもりであります。
NHK・渡辺
8月28日に出してる一番最後の9の報告のところで
「本申請外の行為をし、または付した条件に違反した場合は」
という話があると思うんですが、今日出された281号の中では、
「あくまで申請外の行為と認められ許可を得ずに岩礁を破壊した蓋然性が高い」ということが書いてあるのですが、
仮に区域内で調査が出来なかった場合には、この指示に従わなかったということで、付した条件に違反したということで取り消すという形でよろしいのでしょうか。
(副知事から知事にアドバイス。<要するに6−6で指示に従うかってこと>)
翁長知事
さきほども説明しましたけれども、今回は6の「漁業調整その他公益上の事由等により別途指示をする場合はその指示に従う」ということでありますけれども、今おっしゃったのはそれに従わなかった場合ということでありますので、その場合には許可を取り消すことになると思っております。
NHK・渡辺
要するにそれは、岩礁破砕の調査が認められなかったとしても、条件に違反したということで判断を下すということでしょうか。
(翁長知事・安慶田副知事などの相談する声)
水産課
はい、そういう考え方でございます。
司会
それでは記者会見を終わります。ありがとうございました。