国家論メモ〜夏目さんへのメールから

東京へもどる。世界は悲しみにくれている。家人も悲しみに満ちていた。
深夜、夏目房之介さんにメールを書いた。

21世紀に近代国家は無形化するとぼくは考えてますが、こうした事件が起こると、「国家」信仰があらためて復権してきてしまいます。アフガンにしてもアラ ブ諸国にしても近代国家じゃありません。宗教的・経済的権益を堅持するためのデバイスにすぎないのです。ちょっと上等なならず者集団ですよ、基本的に。司馬遼太郎は「国家はある日突然やってくる」と書いてましたが、一部の先進国を除けば、国家なんてその程度のもので、ならず者と同様ある日突然やってきて民をいいように仕切るんです。そんなまともでない連中を相手に、「近代国家」が軍事的に対峙しようとしている。対応を間違えると地獄ですね。

ロシアが撤退を余儀なくされたアフガンに侵攻するのはどうみても無謀です。アメリカはちょっとしたヒステリーで「やれ!やれ!やっつけろ!」てな感じですが、マドンナのように「報復は報復を生むだけ」と大声で叫ぶ勇気も必要でしょう。WTC崩壊の映像はまさに「戦争」を想起させるけど、ならず者相手にまともに戦争をすることは無茶ですよ。「ジハード」とかなんとかいってる中東諸国の情報も入ってきてるけど、「ならず者でないアラブ・アフガンの民」の日常について、ほとんど情報はありません。NY情報とジハード系情報だけってのも困りものです。こういうのも「情報の非対称性」っていうのかな。

批評.COM  篠原章
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