山本太郎さんの当選は日本の民主主義を壊すのか

参院選挙が終わりました。予想通り自民党の大勝。とりたてて大きな感想もありませんが、新しい展開はいくつかあったと思います。

沖縄では安里政晃候補が敗れて、糸数慶子候補が議席を守りましたが、仲井眞=翁長派が、保守層の糾合に失敗したということでしょうか。仲井眞=翁長の正体がバレちゃったということかもしれません。安里さん、政治家の血筋ではありますが、やはり社会福祉法人の理事長というポジションでは、沖縄の有権者を引きつけにくかったのか。フットワークは軽そうだけど、押さえるべきポイントを押さえられなかったということかも。いずれにせよ、知事選を来年に控えて、これからが正念場ですね。

東京では、終盤に山本太郎候補が追い上げて当選。案の定というか山本太郎さんの当選を批判する方々が続々登場。ここにリンクを貼りつけたアゴラがその代表格でしょうか。

「原発事故の影響に対する誤った情報の拡散」
「中核派などテロ組織との結びつき」

が、批判のおもなポイント。

アゴラに書いている環境経済ジャーナリストの石井孝明さんは、「科学的知見に裏づけられた啓蒙によって民主主義を育てる必要があるのに、山本さんの手法はそれに逆行する」といった趣旨の主張を展開しています。

ぼくは、山本さん以外の政治家にも「科学的知見に裏づけられた啓蒙」する能力があるとは考えていません。それは自民から共産党に至るすべての政党に共通していえることだと思います。だからこそ「衆愚」や「ポピュリズム」といった言葉がしばしば用いられているわけです。啓蒙する能力のある政治家を選べなんて、実に青臭い議論だと思います。政治はハナっから魑魅魍魎の世界じゃないですか。

石井さんのいうように、山本さんが誤情報と混乱の最大の発信源だというのも誤った評価だと思います。放射能をめぐる誤情報は多々あると思いますが、正しい情報やためにする情報も含めて、ぼくは情報のルートや正否を突き止めるのにずいぶん苦労しています。東電も政府もメディアの対応も等しくダメだと思っています。原発推進派からも脱原発派からも、誤情報や不 確かな情報が垂れ流されているということです。なにが真実か、わからなくなってしまっていますが、それは必ずしも山本さんの責任ではありません。事態に冷静に対処する能力が日本にはまだ育っていないということです。

中核派が危惧すべきテロ組織だというのも誤り。革マルなんて、連合(民主党)や社民党などの組織を通じて、とっくに国会に入り込んでますよ。当然、盗聴などもしているでしょうし、公安はそれに対してなんらかの対抗措置をとっていることでしょう。ぼくはいま中核・革マルについて調べていますが、中核派は革マルに比べれば、幼子のような組織ですし、実際その程度の能力しかありません。

山本さんが当選することで、今までアングラだったものの一部が表舞台に出てくると思いますし、支持する側も批判する側も、彼が議員になったことで、責任を持って議論しなければならなくなると思います。渋谷の「選挙フェス」のようなこれまでにない動きがホンモノかどうか判定できるチャンスでもあると思いますし、脱原発運動など「市民運動」と「政治」との距離 もこれまで以上に測りやすくなると思います。評価はともかくあれだけ盛り上がった「脱原発派」が国会に議席を獲得するというのは、見えなかった地図がうっすら見えてくることになるじゃないですか。

ぼくは山本さんのサポータじゃありませんが、石井さんとは反対に、山本太郎さんの登場は、ニッポンの民主主義を考えるために、いいことだと考えています。

yamamototaro

批評.COM  篠原章
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