鼎談・いつも心に三合瓶第2回〜都知事選なんちゃって政策比較 鷽蜂百vs篠原章 (2)

(4)堅実だが面白味のない猪瀬候補

篠原「政策に移ろうか。まず猪瀬さん。突っ込みどころ が少ないんだな、これが。やっぱり副知事だったし、きわめて実務的な印象が強い政策が列挙されているんだ。電力エネルギー改革、地下鉄一元化、少子化対 策、ケア付き住宅整備、職安の都営化、羽田空港の明日セス数の増加と空港周辺へのIT産業立地促進、東京五輪の招致、中小企業・ベンチャーの支援、防災対 策って感じでね。あの『ミカドの肖像』の著者は今何処っていいたいけどさ、自治体の首長なんてこんなものなのかもしれない。たかが東京都知事じゃないか と。そんなんでいいのかっていう意見もあるけど、独断的で超個性的な石原さんの後だからそれでいいんじゃないかという気がする。手堅い政策ばかりを賢く並 べててね。ちょっとクール過ぎるとは思うけど。これが猪瀬さんの政策だよ」

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鷽「原発という表現がない。それから電力自由化という文言も見あたらない」

篠原「少なくとも公表されている政策のなかにはない。 ただ、他の文書や街頭演説などでは触れるだろうけどね。原発にはあまり触れないとは思うよ。東京都は東電の大株主だから、廃炉は提案できるし、宇都宮さん は現にそれを公約に掲げているけど、猪瀬さんは触れていない。これまでの猪瀬発言を見ると、彼は脱原発は既定の方針だと理解しているはず。だが、東京都が できることは限定的だという認識だと思うよ。電力自由化は猪瀬さんの持論だと思うけど、東電の大株主である以上、株価が大幅に下がるようなことも知事候補 としては迂闊にいえないんじゃないか。ただ、電力自由化のためのレールを敷く作業はやると思うよ。結局、より安価でより安定的でかつクリーンなエネルギー を求めるという方針の範囲内で脱原発プロセスを具体化していこうという姿勢だね。脱原発運動の側から見れば、不十分ということになるだろうけど、“東京都 の首長としてできることは限られている”と反論するんじゃないかな。猪瀬さんの場合、慎太郎さんとは違って、この問題について余計なことは言わないだろう から、論争にもなりにくいな」

鷽「全体的に見ると、他の候補と比べるとずいぶんシンプルな政策だな」

篠原「賢くまとめているんだよ。現職みたいなものだか ら、現職の強みというか。宇都宮さんと違うところは所得再分配に力を注いでないように見えるという点かな。いわゆる弱者救済のための政策が明確になってい ない。ただね、セーフネットはすでに都政のなかに組み込まれているというか、大半は国政の領域なんだよな。たとえば生活保護がその典型だけどね。福祉はや はり国政に左右されるから、自治体のできることは追加的な部分にすぎない。石原都政で各種福祉制度が後退したというけれど、制度そのものが消滅したわけで はないし。それに猪瀬さんは、市場経済を刺激して所得形成の機会を増やすことがいちばん大切だと思ってるんじゃないかな。所得再分配は都のレベルでもでき ないわけじゃないんだけど効果が薄いという判断があるのかもしれない」

鷽「それは猪瀬を好意的に評価してるってことかな」

篠原「要するに国からの財源配分の適正化がはかられれ ば、再分配のための財源も増える。そうなれば猪瀬さんといえども財布の紐は緩めるよ。ただ、それは国の制度次第だからね。簡単に公約化できない。でも、分 権化・財源移譲はもう深刻な争点じゃないという認識はあると思うよ。レールは敷かれているから、今さら嘉田さんのように大声でいわなくとも、消費税が増税 になれば同時に地方の財源も増加していく」

鷽「となると嘉田由紀子とかが地方から中央を変えるっていってるのは、敷かれたレールの上でレール敷いているのは自分だといっているのに等しいのか」

篠原「もちろん、これだけ中央も地方も財政が逼迫して くると、地方への財源移譲が行われても十分ということはないだろうね。限られた財源のなかで選択するしかない。だから、足りない足りないって文句をいうこ とはいくらでもできるんだけど、所得再分配に限っていえば、やはり憲法の規定が大本にあるから、自治体間で所得再分配のレベルが大きく異なると、憲法違反 という解釈も出てくる。北海道だろうが、沖縄だろうが、東京だろうが、物価調整の効く範囲内での所得再分配格差しか許されないだろうね。東京の現金支給や 現物支給が突出して高くなったりすれば、当然、他の府県とのバランス問題が生じてしまうから、自治体の所得再分配にも限度があるんだよ。それよりも供給面 というか、所得形成を促進する機会を増やすことに制約はないから、猪瀬さんはそちらのほうに力を入れたいと思ってるんでしょう。トータルでいえば、魅力的 というわけじゃないので公約としては70点ぐらい。だた、彼の政策は短期で実現できそうなものが圧倒的に多いから、実際に70点は取れる。点が取れるもの しか公約にしていないから魅力が薄くなるんだけどね」

(5)「江戸城復元」という目玉が笑いを誘う松沢候補

鷽「神奈川県知事だった松沢はどうなんだろうね」

篠原「松沢さんはねえ、いちばん公約が多岐にわたるんだな。その割に魅力は薄い。魅力を創ろうと何でもかんでも突っこんだ割には内容が薄いってことだね」

鷽「猪瀬より魅力がないってことだね」

篠原「それをはっきりいったら元も子もないけど、この人、いったい何を考えているんだろうって素朴な疑問を抱くことは確かだね。ズレまくっているよ。これが松沢さんの政策一覧。いちばん長ったらしいんだ」

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鷽「新銀行東京清算は、他の候補にない公約になるのかな。それはいいんだけど、江戸城天守閣 復元っていったいなんなんだ? 都民の象徴とか歴史の尊重とかいっているけど、四代将軍の時代(1658年焼失)までしかなかった天守閣を、今、この財政 難の時代に東京で復元するなんて、ユニークを超えてクレイジーだね」

篠原「歴史をはき違えているんだよ。観光資源にはなるかもしれないけど、そもそも皇居の話だから、実現性はきわめて疑わしいね。歴史的資源ともいえない。この政策一つとっても松沢さんの常識を疑ってしまう」

鷽「この人はずいぶん禁煙に拘ってるな。受動喫煙防止条例か。神奈川でやったことじゃないか」

篠原「“対猪瀬”でさ、この条例制定を前面に出してる んだよ。選挙では攻撃するはずだよ。“宴会でプカプカ煙草を吸って人の健康を考えない猪瀬は都知事には相応しくない”って。ま、受動喫煙も問題かもしれな いけど、個人攻撃に近いレベルで選挙を戦おうという魂胆だからね。この人こそ都知事に相応しくないって思う人もたくさん出てくるよ。逆効果だと思うね」

鷽「でも、少しは見るべき政策もあるんじゃないか?」

篠原「どうかな。目玉になるものなんてほとんどないんじゃないかな。そもそも中長期の公約が多すぎるね。その割に夢もないし。インフラ整備が多いけど、なんだか怪しい事業もたくさんあるし」

鷽「うむむ。東京丸ごとテーマパーク化っていったってリアリティはないよな」

篠原「権限委譲や財源移譲の話だって、もうとっくに出 てきているものだしね。多選禁止や女性副知事はいいけど、あとは魅力はないね。人工林とか墓地とかも、何を考えているんだろうって思わせるね。人工林はあ ちこちで提案されているけど、そもそも広域の仕事だし、都営墓地つくるくらいなら都営住宅をつくったほうがマシかもしれない。ポイントがズレてるんだと思 う。民間活力ってことばも繰り返されるけど、新味はないね。もう大半はやってることじゃん、って思うよ」

鷽「この程度の人物が神奈川県知事だったんだな。知事は誰でも務まるんだな」

篠原「それは言い過ぎだけど、この公約に関するかぎり、松沢さんは落第点。せいぜい50点だね」

(6)情熱が財政赤字を増やす?宇都宮候補

鷽「じゃあ、宇都宮はどうなんだい?あんたの見解からすれば、過去の遺物の左翼弁護士になるよね」

篠原「宇都宮さんのことはけっして嫌いじゃないんだけ どね。苦学した正義の人だし。闘いはやはり猪瀬VS宇都宮に絞られるだろうけど、急ごしらえの候補の割には政策はまとまっている。ただ、経済とか財政には 弱い。この表を見ても所得再分配とか医療福祉とかに力が入りすぎている。まあ、最初から脱原発と弱者救済のふたつが柱だから、支持者はこうした政策体系で なければ納得しないだろうね。過去の遺物とまではいわないけど、美濃部さん時代を想いだすことは確かだね」

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鷽「この人は財源問題をどう考えているのかねえ」

篠原「財源には触れていない。公共事業を減らして、無 駄を無くしてっていうことだろうけど、財政経済の基本はやはり、民間の所得を増やすことだと思う。所得が増えれば税収も増えるからね。ただ、所得を増やす ための方策が十分じゃない。豊かさは所得が基準ではない、“人と人の絆”だと主張するにしても、福祉や医療には確実にお金がかかる。ボランティアで福祉を やるわけにはいかないもの。財源がなければ増税すればいい、借金すればいいといっても、地方自治体の場合、限度がある。誰が増税分を負担するのかという問 題もある。企業課税を強化すれば、企業は東京への立地をやめる可能性は強いから、結果として課税しても税収は上がらないということも十分ありうる。中央か らの補助金を増やすといっても、東京の場合は相対的に優良自治体だから、もらえる補助金にも限度がある。このままのスケジュールで行けば、2年後には消費 税が増税されて、その増収分の一部は東京都にも入ってくる。それを活用すれば宇都宮さんの政策も実現するだろうけど、宇都宮さんは消費税反対・凍結派だろ うから、もし当選したら地方消費税の増収分をどう活用するんだろうね。これも問題だね。増収分を医療・福祉に回すこともできるけど、大義名分が立つのか な。とにかく財源についてはわからないことが多すぎる。宇都宮さんの政策から類推すると、彼の政策を実行すれば東京都の財政赤字は確実に増えていく」

鷽「脱原発派としての政策は、なんだか中途半端な気がするな。リアリティがない」

篠原「脱原発の姿勢は“東京の電力需要は東京で供給” という発想に現れているんだけど、ここでは数値がはっきり示されていない。結局、他の地域の発電所に頼る構造を大幅に変えられないという気がする。福島な どの廃炉に関する“株主提案”は脱原発派として自然な方針だけど、正直いって、電力をもっと自由化して東電に競合する電力会社を育成しないと、脱原発の流 れも停滞してしまう怖れがあると思う。ぼくはそちらのほうがより重要だと思うね」

鷽「産業振興のところに書いてる再生可能エネルギー産 業の育成に異議はないけれど、これも東京だけでは話を詰められないんじゃないかね。そもそも東電の体たらくは電力会社に地域独占を許してきた国全体のエネ ルギー政策のツケだもの。それに、町工場を支援するともいっているけど、彼らの高い技術をセールスする仕組みのほうが問題だよ。これを読むかぎり、そこま で踏み込んでないな。商店街の活性化も政策化しているけれど、これも、たとえば防災・保安という視点が必要だろうね。商店街を商店街として復活できるとこ ろは、そんなに多くないよ。スーパーやショッピング・モールを選好する住民の現状を劇的に変えるのは難しいからな。大店法を強化する必要もある。賃金だけ ど、現行の水準が低すぎることは確か。とはいっても政治主導で賃金を上げるのは限度がある。労働市場は歪むよ。やはり景気とか物価が賃金水準の最大の背景 だからね」

篠原「給食費なんかの義務教育の付帯経費を完全無償化 するというはけっこうだけど、所得制限は必要だよ。所得の高い人まで無償化の対象に含めることはない。同じことは就学援助とか私学(私立高校)助成につい てもいえるし、保険料・医療費の補助・無料化についてもいえる。所得制限は宇都宮さんも考えていると思うけど、これは徹底してやらないと彼の貧困救済は裏 目に出るよ。ただ、こうした政策は所得制限をかけたとしてもかなりのお金がかかる。さっきもいったように、財源についてははっきり書いてないんだ。所得機 会の創造は中小企業育成ぐらいでね。まさか消費税反対派の宇都宮さんが消費税増税分の地方税化を当てこんでるんじゃないだろうなあ。東京ったって自治体だ から現状では財源は限られる。その点では猪瀬さんのほうが経済も財政も理解していると思うよ。猪瀬さんが供給面・生産面に特化したような政策を打ち出して いるのは、財源対策でもあるんだよね。景気がよくなれば税収はアップするからね」

鷽「福祉が後退しているといわれるなかで、24時間巡回型在宅ケアといった手間のかかる政策もあるな」

篠原「高齢者福祉の問題は、なんともいえない。高齢者 にとってはありがたい制度だが、へたをするとヘルパー、看護士の労働条件劣悪にしてしまう。“だからこそ”だろうけど、介護労働者の労働条件の改善をう たってる。でも、賃金が上がっても労働が強化されたらサービスの質は低下するよ。もちろん、財源や高齢者の負担の問題もある。財源といえば、都営住宅増設 がやはり問題かな。でも、民間アパートや住宅を借り上げて公共住宅化するという宇都宮さんの政策は評価しているんだ」

鷽「そりゃ、おかしいよ。住宅は民の供給で十分だって。安価な都営住宅をつくっても、民と競合するだけだし、将来はスラム化しかねない」

篠原「時間のかかる都営住宅の増設より民間住宅の借り 上げを評価しているんだよ。ただ、それでも住宅市場を歪めることにはなる。家賃が相対的に上がるからね。官に依存する民という構造的な問題も生まれる。や り方によっては貧困層に対する家賃補助制度のほうがマシかもしれない。 でも、貧困が問題になっている以上、住宅供給の不十分な部分のすべてを民の供給に頼れないんじゃないか」

鷽「あんた、そこが甘い。宇都宮のいうように、住宅は人権というのは釈然としない。ネット難民、大いに結構じゃないの。そこから新しい発想やライフスタイルも生まれるよ」

篠原「本来、住宅問題は都市計画の問題なんだと思う。 臨戦態勢を訴える幸福実現党のトクマ候補が大胆な都市計画を掲げているけど、欧州のような暮らしのスタイルを求めるとすれば、山手線内の狭小住宅やビルを 全部壊さなければならなくなる。要するに一戸建てや低層ビルをみんな撤去して、あらたに建設したアパートに住むようにすれば、職住近接で、平日でも芝居や コンサートなどのカルチャーを享受できる空間が生まれる。歴史的空間をどう残すとか、下町をどう再生するかとか、路地の文化をどう生かすとか、そういう問 題もあるけど。こうした都市計画は非現実的かもしれないけど、都民の住まい方に関する方向性を打ち出すことがホントは最大のポイントで、貧困の問題はその なかに位置づけられると思うけど、現状では、過渡的な貧困対策は必須だと思う。景気の上昇を待っていられないからね。治安のことも考えると、民間住宅を借 り上げて公共住宅化するのは悪くないんじゃないか」

鷽「宇都宮で驚いたのは、安全保障に一役買うといってるところ。中国や韓国と仲良くしようってわけだ」

篠原「石原都知事の尖閣買収計画も同じだけど、安全保 障や外交はやはり国主導でないと事態をより複雑化する可能性はある。東京から米軍基地をなくすという方向性には賛成だが、基地問題はそれ単体で議論しても 意味がない。やっぱり国家レベルの安全保障の問題だよ。国家というものが現状のまま存在するかぎりは、国家の問題ということ。国家の役割を認めないという のなら話は別だけどね。北京市やソウル市との交流で日本の安全が保障されるなら、こんなに簡単なことはないけど、相手国に利用されて終わりだね。日本とい う国が二分している印象を与えるし。こちらが善意で平和会議なんかを持ちかけても向こうが善意で応えるとはかぎらない。ソウル市長は民選だけど、北京市長 は官選だもの。中国指導部のいいなりでしょ。都市行政府間交流の平和外交なんてありえない。それよりも民間レベルでの文化交流とか経済交流のほうがまだ役 に立つ」

鷽「“すべて話し合いで解決”という単チャンネル発想では安保・外交は成り立たない。子どもっぽい政策だね。性善説と性悪説のバランスの上に安保・外交を考えるようにならないと、日本は国際社会の大人になれないよ」

篠原「宇都宮さんの場合、点数を付けるのは難しいな。ぼくとはかなり考え方が違う点もあるが、共産党や社民党の候補よりも強い熱意を感じる。とくに貧困対策に熱心だ。気持ちはわかるけど、ぼくの立場からすればピントがずれている」

鷽「じゃあ、オレが点数を付けるよ。60点。選挙のための政策としてはぎりぎり合格点だが、現実的に考えると財源や供給面が貧弱すぎる」

(7)まとめ:(猪瀬+鈴木宗男)÷2みたいな候補が欲しい

篠原「トータルでいうとね、猪瀬さんの公約・政策は供 給面・生産面での経済刺激策が東京をよくするという理念で貫かれている。所得再分配についてはこれまでの制度の下で継続するほかないと思ってるんだろう。 ただ、なんといっても実務的にすぎて、冷たい印象はあるね。政治家は“血が通っている”という部分を見せるのも仕事だからな。やり過ぎると嘉田さんみたい になことになるが。宇都宮さんには「貧困救済」という視点が何より強い。所得再分配が問題だという認識はぼくも共有しているけど、宇都宮さんの場合、いか んせん供給面・生産面への配慮が少なすぎる。単眼的だ。宇都宮さんは脱原発も争点にしたいという意図があると思うけど、ご本人にも都知事選の争点にはなり にくいという自覚はあるだろうな。原発に対する都民の関心が薄いこともあるけど、これはまず第一に国政の問題だから、都知事が廃炉にせよといっても限度が あると都民は思うんじゃないか。総合的なエネルギー政策の問題でもあるし、福島を再生させる政策とセットで論じなければならないからね。松沢さんは問題外 だ。好意的にいえば意欲が空回りしている」

鷽「松沢はズレまくりだよ。神奈川には政令指定都市の 横浜があるから、知事の仕事は相対的に小さかったんだと思うよ。そういう場所では、橋下さんのいうように知事よりも市長のほうが実効性の高い仕事ができ る。県知事の延長で都知事を考えているとすれば、大間違いだ。そもそもアイデアが決定的に貧弱だよ。あの程度のアイデアだったら実務重視のほうがマシだと いう選択になるから、猪瀬を選ぶか松沢となれば、当然、猪瀬だね」

篠原「結局、今回の選挙は、政策からいっても“猪瀬 VS宇都宮”なんだけど、左右両翼の決定的な対決という構図にはなっていないね。首都とはいえやっぱり地方の首長選だ。宇都宮さんは仕事柄貧困の現場を 知っているから、それは強みだとは思うけど、貧困の実態を知ることと貧困を救済することは必ずしも一致しないんだ。貧困はやはり経済問題。となると市場経 済をいかに刺激するか、市場経済の不具合をいかに克服するかという目線が重要だとぼくは思う。宇都宮さんにも共産や社民に引っ張られすぎるとマズイという 判断はあると思うけど、結局、政策については共産・社民シンパの力を借りなければ立案できないという現状だろうな。猪瀬さんは現職副知事の強みがあり、実 務的にやるべきことをやるという印象だけど、モノ書きとしての創意はあちこちにちりばめられている。ただ、彼は政治そのものには冷めているように見えるか ら、そこが寂しいといえば寂しい。鈴木宗男みたいな熱意を持てとはいわないけど、もう少し“やる気”を見せて欲しいとは思うね。(猪瀬+鈴木)÷2みたい な候補がいるとおもしろいんだけどなあ」

2012年11月30日 東京「カフェ・ド・クリエ」曙橋店にて

【鷽蜂白 プロフィール】 1961年台湾(台南)生まれ。父は台湾系米国人、母は祖先が喜界島に連なる日系ペルー人という家庭環境に育つ。名古屋の某高校・東京の 某大学を経て米国ペンシルバニア大学大学院修了(Ph.D)。専攻は社会学。詳しい正体は不明だが、コスタリカを拠点としながら主として南米スペイン語圏 のマスメディアに寄稿しているといわれる。福建語(台湾語)、北京語、広東語、日本語、スペイン語、英語が堪能らしい。長く台南近郊で海老の養殖場を経営 していたが、7年前に海老ビジネスからITビジネスに転身。台北、上海、ニューヨーク、パリなどでIT関係の事業を手がける。日本にも複数の会社や営業所 をもつという。篠原とは1997年にインドネシアのバタム島で知り合い、痔の話題で意気投合、以後、つかず離れずのつきあいが続いている。しつこい疣痔が 悩みの種。

批評.COM  篠原章
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