東京・東京周辺の米軍基地:相模総合補給廠
U.S. Military Bases in/around Tokyo : U.S. Army Sagami General Depot
「米軍基地」というと沖縄を思い浮かべる人が多いだろうが、実際には全国各地に米軍基地(施設)は存在する。東京やその近郊にも数多くの米軍基地(施設)がある。今さら驚くに当たらないが、首都に外国の軍隊が駐留するのは日本だけだという。
仕事用に借りている町田の家から25 分ほど歩くと「アメリカ合衆国陸軍相模総合補給厰」がある。管理は米陸軍だが、陸軍、海軍、空軍、海兵隊の米軍4軍が使う銃器や兵器の部品、食糧などが保管されている。日本陸軍の「造幣廠」(戦車など兵器の製造工場)だった場所を米軍が接収して使っているから、軍事施設としての歴史は今年で76年に及ぶ。 ぼくの借りている家の前を走る緑道も、もともとこの造幣廠が戦車のテスト走行用に造ったもので、いまだに「戦車道路」と通称されている。
相模原市内には米軍施設が全部で三箇所あるが、相模総合補給廠はJR横浜線矢部駅駅前〜相模原駅前にかけての広大な土地を専有している。その面積は東京ドーム46個分に相当する214.4ヘクタール。が、近隣の住民を除き、都民や神奈川県民のほとんどはその存在すら知らない。
写真1は矢部駅前側のゲート(チェックポイント)。ちょっと見にはわかりにくいが、矢部駅に停車する横浜線の車両も写り込んでいる。写真2は、近隣の県営団地から覗いた施設内。無数の軍用車両が並べられている。
写真3は、現在は廃線となった軍用引き込み線の跡。写真4は矢部駅からゲートにつながる通路。駅前の公共駐輪場の隣はもう「米軍基地」だ。
相模原市は、道路用などとして一部の敷地(14 ヘクタール)の返還を求めており、「全面返還」も視野に入れたいとのことだが、さすがに「全面返還」を本気で要求しているフシはない。なぜなら、これだけ広大な土地を返還されても使い途に窮するからだ。住宅、ショッピングモール、公園などとして再開発するにしても財政負担は莫大である。財政的には、固定資産税代わりに政府から市にもたらされる「基地交付金」を受け取っていたほうが安全である。基地返還が周辺地価の下落を招くという問題も見過ごせない。過去には有害物質の投機などいわゆる「基地被害」もあったが、「基地との共存」以外の選択肢は現実的ではなくなっている、というのが大方の関係者の見方だ。
東京あるいは東京近郊ですら「米軍基地問題」の基本は、もはや財政や地域経済の問題である。東京の米軍基地は公有地、沖縄の米軍基地は公有地・私有地の混在という違いはあるが、東京の基地問題も沖縄の基地問題も、ほぼ同様の視点で考えられるのではないか、と思っている。