「政治的中立性」を犯すアムネスティ「山城議長保釈」要求(追記あり)

Amnesty International's Request For " Bail of Mr.Yamashiro " Has Committed Its Political Neutrality Principles

アムネスティ・インターナショナルが、器物損壊などの罪で沖縄県警に勾留されている山城博治沖縄平和運動センター議長の早期保釈を求める「緊急行動」に訴えました(アムネスティ・インターナショナルHP同日本支部HP)。

アムネスティ・インターナショナルの活動が無意味だとは思いません。「死刑廃止」も一つの見識です。アムネスティ・インターナショナルは長いこと北朝鮮の人権問題に取り組んできませんでしたが、最近になってようやく活動を活発化させているようです。彼らのような人権NGOの活動が、国家による人権抑圧を食い止め、少数者を救済する効果を持つことはけっして否定しません。

が、「山城博治氏の早期保釈」の要求はお門違いです。「長期勾留」が常態化している日本の司法・警察システム一般の改善を求めるなら理解できますが、山城氏は果たして「政治犯」なのでしょうか?日本政府は「表現の自由」を侵しているのでしょうか?拘置所には、誰からも支援を受けられない容疑者・被告人が多数長期勾留されています。そのなかには無罪相当や微罪の人も含まれます。そうした人たちの人権問題を棚上げして、山城氏の釈放だけを求める姿勢には納得できません。

アムネスティ日本支部には、翁長知事の国連演説や沖縄県ワシントン事務所の開設をお膳立てした猿田佐世弁護士、MXテレビでも話題になった「のりこえネット」の後ろ盾となっている武者小路公秀氏などが深く関わっています(ただし、現理事ではありません)。彼らがその活動に関わってから、アムネスティ日本支部は、基地反対運動を含む日本の反体制運動や「護憲運動」と深くリンクしながら動いているというのが実情です。これはアムネスティ・インターナショナルの謳う「政治的中立性」の原則と大きく乖離するものです。

にもかかわらず、アムネスティ・インターナショナルのロンドン本部は、日本支部の助言を受け入れ、「山城博治氏の早期保釈」というメッセージを安倍首相並びに検事総長に対して送付しました。今回のアムネスティ・インターナショナルの行動には大きな疑念を抱かざるをえません。

【追記】(2月1日記)

一般には、起訴され、初公判を迎えるまで拘置が続くのが「常識」です。その間、保釈請求は却下されつづけます。山城氏の初公判の日程は決まっていないようですから、今も拘置所に留め置かれるのはとりたてて異常なことではありません。もちろん、日本で長期拘留が常態化していることは問題だと思いますが、それは山城氏の問題ではなく司法システムの問題です。また、山城氏の罪は形式的には「微罪」に見えますが、組織犯罪の可能性があるため、検察は今も取り調べを続けているのだと思います。組織犯罪の可能性があるということは、保釈されれば誰かと共謀して「証拠隠滅」する恐れがあります。その結果、裁判所も保釈を認めないのです。また、接見禁止も組織犯罪の可能性を考慮して取られている措置でしょう。山城氏の事案は、暴力団などの組織犯罪と同じ扱いだということです。「政治犯」の事案ではなく、「組織犯罪」の事案なのです。
 
以上は司法関係者にとって「常識」です。山城氏を支援する人たちやアムネスティ・インターナショナルもそのことは承知しているはずです。アムネスティが「長期拘留を認めている日本の司法システムを改善せよ」というのならわかりますが、彼らはそうはいいません。彼らの緊急行動は、あくまで「山城氏個人の保釈」を対象としたものです。他の被拘置者のことなど、いっさい眼中に入っていません。「法の下での平等」を考えれば、アムネスティの要求はむしろ不当・不公平な要求だといえるでしょう。きわめて政治的な要求だと思います。アムネスティは自らに課している原則「政治的中立性』を犯しているだけでなく、一般の被拘置者を無視しているという意味で、「人権」をまともに考えている団体とは思えません。
 

批評.COM  篠原章
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