東京都はコロナ感染者数を誤魔化しているのか?

感染者数誤魔化しの指摘

東京都は毎日18時以降に新規の感染者に関するデータを発表すると同時に、感染者の累計やPCR検査人数なども公表している。
 
PCR検査人数・件数の注書きに、「医療機関が保険適用で行った検査は含まれていない」と記してあることは気になっていたが、「まさのあつこ」さんという特定政党関係者と思しき方が、Twitterで「東京都の担当者に確認したところ、検査人数だけでなく陽性者数にも保険適用の患者は含まれていない(東京都は感染者数を誤魔化している)」という主旨のTweetを連投していた。まさのさんの言を信ずるとすれば、東京都は大嘘つきということになる。
 

東京都公表の感染者数・PCR検査数(4月10日)

 

厚労省データとの比較

たしかに保健所を直接通さない民間医療機関のPCR検査数については、はっきりとした数値が毎日公表されているわけではないから、そこに誤魔化しの余地はある。しかし、保険適用者を除外することで東京都が感染者数を過少に報告するなどということが本当にありうるのだろうか。保険適用者を数値から除外したら日本の感染の実態を誤魔化すことになるだけでなく、コロナ対策が追いつかなくなる。
 

「東京都の数値の誤魔化し」を裏づけるようなデータは一体あるのか。厚労省は独自の数値を公表しているが、基準の違いやタイムラグがあるのか、同じ日の東京都の公表数値より小さい数字が出てくる。1〜2日の遅れが見て取れる。ただし、保険適用者についての特別な記載はないから、すべての感染者の人数ではないかと推定できる。東京都の数値と厚労省の数値の単純比較は難しいが、どちらがより正確なのかはともかく、タイムラグを考慮すれば両者に大きな乖離はない。

 

厚労省による都道府県別感染者数(4月10日)

 
メディアが取り上げている数値は、基本的に東京都の公表値を踏襲して「感染者実数」としている。まさのさんのような「疑念」が示されたことは一度もない。まさのさんの主張に従えば、メディアも東京都に騙されている、あるいは東京都の誤魔化しを承知の上で公表数値に倣っていることになる。
 
まさのさんは、PCR検査数を「分母」と表現し、東京都の担当者から保険適用者は「分母」に含まれていないという確認を取ったという。さらに感染者数を「分子」に喩え、「分子にも含まれていないということですか?」と問うたら、担当者から「仰るとおりです」といわれたという。
 
まさのあつこ氏Tweet

求められる説明責任

医療崩壊を最大の懸念として「外出自粛」を呼びかける東京都や厚労省が、肝心なその数字を誤魔化して得することなどなにひとつない。たとえ誤魔化すことができたとしても後になって簡単にばれてしまう。そうなれば問題はより大きくなる。
 
まさのさんの言が「間違っている」と糾弾する気はサラサラないが、「分母と分子」という聴き方には疑問がある。どうせなら「東京都が公表する感染者数には、保険を適用してPCR検査を受けた人は入っていないのですか?」と正面から聞いて欲しかった。
 

思うに、PCR検査の保険適用者が、都によるPCR検査数から除外されていることが確かだとしても、そのうち陽性者は感染者数に計上されている、と見るのが正しい見方ではないか。東京都の担当者がミスしたのか、失礼ながらまさのさんが聞き間違えたかのどちらかだろう、というのがここでの暫定的な結論だ。

いずれにせよ、東京都はまさのさんのこうした指摘について、個人ではなく機関として応えてほしいと願うし、その義務がある。もしまさのさんの指摘が正しければ、都の意図するところが何であれ、都民を欺いていることになる。都民から不信感を突きつけられれば、小池百合子都知事がどんなに素晴らしいメッセージを発しても、都民はコロナ渦のなかでただただ迷走をつづけるほかない。責任は重大だ。

 

参考)東京都発表の感染者数の推移(4月1日〜10日) 批評ドットコム作成

批評.COM  篠原章
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket