ありがとう、かしぶちさん

訃 報

関係各位 平成25年12月20日

弊社所属バンド、ムーンライダーズのドラマー、また多くの映画音楽などを手掛けてきたミュージシャンかしぶち哲郎は、かねてより食道癌で闘病を続けて参りましたが、2013年12月17日夜半に永眠いたしました。ここに生前のご厚誼に感謝申し上げ、謹んでご通知申し上げます。

葬儀に関しましては、かしぶち哲郎本人の意向を尊重いたしまして、ご家族のみで密葬のかたちで執り行いました。長年お世話になりました関係各位の皆様、また温かく見守ってくださったファンの皆様には、親しくお別れしていただくべきところではございますが、本人のたっての意向を、ご理解いただければと存じます。心より深謝申し上げます。また、誠に勝手ながら、ご供花、ご香典も謹んでご辞退させていただきたく存じます。

後日都内にて「お別れの会」を執り行いたいと思っております。日程、詳細などが決まり次第、改めてお知らせ申し上げます。

重ねまして、かしぶち哲郎と仕事を共にしていただいた関係各位の皆様、かしぶち哲郎の音楽を愛し、支えてくださったファンの皆様に、心より御礼申し上げます。

有限会社ムーンライダーズ・ディヴィジョン
担当:野田美佐子

2008年の9月頃だろうか。かしぶち哲郎さんから携帯にお電話をいただき、「古い音源をまとめるからライナーノーツをお願いできないか」というお話があった。ぼくははちみつぱいも、ムーンライダーズも、かしぶちさんのドラムも、かしぶちさんのヴォイスも大好きだったから、当然、引き受けさせていただいた。

何回かやりとりがあった。音源にはいいものもあったが、あまりよくないものもあった。でも、記録としてとてもレアなものばかりだった。最初は比較的長いライナーノーツを書いたが、やりとりを経て、最終的にはかなり短いものになった。いま、そのやりとりについては、とてもとても悲しいから詳しく書けない。

それから1年ほど連絡はなかったが、ある日、パッケージとなった『自由なメロディー』(2009 年10月)が送られてきた。かしぶちさん、慶一さんをはじめ、はちみつぱいとムーンライダーズの面々はみな、20代の自分たちの才気とパワーをもてあましていた。どうすればその才気とパワーをカタチにできるのか、格闘していた。その格闘が彼らのロックであり、彼らの表現の肝だった。

あのヴォイスが、あのタイコがもう聴けないのか、と思いたくない。「ありがとう、かしぶちさん」ということばがふさわしいのかどうかもほんとうはわからない。

愛したミュージシャンが亡くなるのは、遠くの友を亡くすより辛い。ひとり、またひとりと、亡くなるたびに、ぼくの心も少しずつ削られていく。覚悟はしていても、諦めたくない、信じたくない、という思いは残る。

『自由なメロディー』かしぶち哲郎

『自由なメロディー』かしぶち哲郎

批評.COM  篠原章
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